半欠けボードが、沖へとゆっくり流れていった。赤さを増した夕陽が、水平線に沈んでいった。

 夕刻になった。

 海はその日一日ブルー・コーデュロイを運んで、陽が傾く頃になってぱたりと静かになった。

 いま夕陽が海をオレンジ色に染めている。

 そのきらめきの中に太郎は立っていた。手には、今朝折った半欠けのボードを持っていた。

 海にはもう誰も残っていなかった。すべてのサーファーは満足しきって家路についたのだ。

 太郎は思う。

 僕はどこに帰ったらいいのか?

 日本か?

 冗談だろ。

 僕はもう日本には帰らない。

 そう。太郎はそれを決心して、この海に降りてきたのだ。

 ルピータ、・・・。おまえが言っていたことって、これだったんだね。

 ありがとう、ルピータ。

 おまえの予言通りラ・プンタに来て、本当に良かった。

 パパも、ラ・プンタに来る前に、おまえに会ってたんだよね。

 ・・・。パパもニュージーランダーに乗ったんだろうか?

 もし、これがキッカケだったのなら、・・・。

 太郎は、そっと、半欠けボードを水につけた。引いていく波が、すっとそれを持っていった。

 手ぶらになった手を腰のポケットに入れると、指先に何かが触れた。

 取り出してみると、それは日本を発つときに母親がくれた連絡先のメモだった。

 ハハハ。必要なときにはなくて、いらないときに出てくるんだからな。

 太郎は笑ってしまった。

 半欠けボードが、沖へとゆっくり流れていった。

 赤さをひときわ増した夕陽が、それを導くように水平線に沈んでいった。

 太郎は、ラ・プンタからボードにむかって叫んだ。

 「おまえは、僕の代わりだあ!いつか、日本にたどり着け!」


                                (了)

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!