「ボードが折れたのに、どうして笑ってるの?」 「笑ってるかい?」  これ以上大きな笑顔は誰も作れない。

 岸辺では、我を忘れたアニタとレヒーノが、腰まで海につかって手を振っていた。

 東洋人のサーファーは、きびすを返して歩きだしていた。男がひとことふたこと警官に話しかけると、パトロールカーはサイレンを鳴らさずに帰っていった。

 太郎は少し不思議に思ったが、沖にむかってパドルを始めた。今は、「もう一度乗りたい」という気持ちでいっぱいなのだ。

 セットが入ってきた。

 よおし、こいつもいただきだ!

 うねりは岬の彼方から割れだしたが、太郎はインサイドでつかまえる気でいた。

 波は綺麗に沖からピールしてくると、「発射台」の所で跳ねるように大きくなった。

 遅れ気味ながら、太郎は強引にテイク・オフする。

 どん。

 波が閉じた。

 真っ逆さまに落ちた太郎は、「洗濯機セクション」の渦の中に放り出された。

 ボードにつながったリーシュ・コードが足を引き、太郎を海の底まで連れていく。

 伸びきったコードが切れた。体が自由になり、浮かび上がる。

 息をかろうじてつくと、たてつづけにホワイト・ウォーターが押し寄せてきて、太郎は砂浜まで流された。

 太郎が岸に戻りつくと、レヒーノとアニタが駆け寄ってきた。

 岸には、ガン・ボードのテール半分が打ち上げられていた。ちぎれたリーシュが、引いていく水にぴちゃぴちゃと揺れた。もう半分はどこかに流れていってしまったのか、近くには見あたらなかった。レヒーノがテール半分を拾いに走った。

 「だいじょうぶ、タロウ?」

 アニタが心配してきいた。

 「だいじょうぶさ」

 「ボードが折れたのに、どうして笑ってるの?」

 「え? 笑ってるかい?」

  これ以上大きな笑顔は誰も作れない。

 「すごいよ、タロウ。すごいよ」

 半欠けボードを取ってきたレヒーノが、声を上げた。

 「そうかい? すごかったかい? グラシアス」

 太郎は答えながら辺りを見回した。東洋人のサーファーがまだそこにいないかと、さがしたのだ。

 しかし、男の姿は見あたらなかった。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!