サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−20「フリー・フォール」

 

フリー・フォール。滝を落ちるように滑る。体の中を風が抜け、すべてを後ろに運んでいく。

 無意識のうちに、手足が正しい動作をする。

 右足がテールに乗る。

 両腕が伸びる。

 胸が反る。

 スピードと緊張の中、肉体が最大限の能力を発揮する。

 尖ったピン・テールが、水の壁に食い込んだ。

 後になった右脚に体重を預ける。

 落下で生まれる風圧が、板をはねのけようとする。

 左足を軽く当て、それを押さえた。

 フリー・フォール。

 太郎とボードが滝を落ちるように滑る。

 体の中を風が抜け、すべてを後ろに運んでいくようだ。

 ドナも、パコロロも、父親も、何も無い。

 頭の中が空になって、ひたすら透明になる。

 背後から波の崩れる轟音が迫ってくるはずなのだが、それすら聞こえない。

 太郎は、自分が静かな世界の中心にいるのを感じた。

 僕は波だ。僕は波になった。・・・。

 ボードのレールが水面を噛みはじめた。

 腰をぐっと落として、ボトム・ターン。

 大きな波動の中心から一歩前に太郎は出た。この一歩が、その強烈なパワーをコントロールする。

 それまでの落下とはまったく違った力のベクトルが、太郎を波のフェイスへと運んでいく。

 ニュージーランダーめ! 捕まえられるものなら、捕まえてみろ!

 ガンのレールがメスのように海を切り裂いて、水滴が吹き流しのように飛ぶ。

 左腕を開いて、振り返る。

 水の断崖が崩れ落ちるのが目に入る。

 ・・・。このガンのスピードに波が追いつけるもんか。

 そう言い聞かせて、波の頂きに駆け上がる。

 先端の波の唇(リップ)は太郎を飲み込もうとするのだが、速さに助けを得たガンがそれを蹴散らす。

 ここからが勝負だ!

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!