サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−14「止まらぬ笑い」

 

照れ隠しに吐き出すように笑うと、ピートの笑いは止まらなくなった。太郎も声をたてて笑った。

 インサイドの波を乗り越えると、潮の向きが変わった。ボードは、ぐんぐんと沖に運ばれていく。太郎は、水をかいて、その方向を整えるだけで良かった。

 一かきごとに自分の体が水を切って進むのは、気持ちがいい。腕を動かすたびに、ラ・プンタの見える角度が少しずつ変わっていく。これまでに見たことのなかった岩や崖が、目に入る。それが、新鮮だった。

 太郎は、ピートの横に並んだ。

 ピートは水平線から来る波を見つめて、太郎に気がつかない。

 太郎は手の甲で水面を軽く叩いた。はじかれた水滴がピートの頬に当たった。興奮して紅潮した顔が、初めてこちらを向いた。充血したピートの目は、焦点があっていないかのように動かなかった。

 ピートは何も言おうとはしなかった。太郎がいたずらっぽく笑うのを見て、昨夜の会話を立ち聞きされたことを悟ったようだ。

 「ハッ、ハッ、ハハハ、ハハハ」

 照れ隠しに吐き出すように笑うと、ピートの笑いは止まらなくなった。

 「ハハハ、ハハハ」

 大きな笑い声につられて、太郎も声をたてて笑った。

 ピートは笑いながら前に向き直った。

 「タロウ、グッド・ウェイブ! グッド・ウェイブ!!」

 太郎は、言葉を口にしては、答えなかった。

 ここでこうしていれば、ピートといっしょに波乗りしているとアニタやイネスは思うだろう。それが陸の人間の考えだ。ここで太郎が何をしていようが、彼らにとっては、同じ事だった。ただ、ピートと会話をしないことで、太郎は襟を正したかった。アニタとの約束を、そんな形で守りたかった。

 だから、ただ笑った。ただ大声で笑った。

 ・・・。僕は、ピートと一緒じゃない。誰とも一緒じゃない。そうじゃない、これは、僕一人の、僕が一人で挑むライドなんだ。

 アニタはそれを解ってくれるだろうか?

 太郎は浜を振り返った。

 海岸には警察のパトロール・カーが来ていた。青い警告灯の光が、朝の空にぼんやりと点滅している。警察官らしき男たちが二、三人、車の外に出ていた。彼らと話している小さい影は、母親のイネスに違いなかった。

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