サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−13「懸命のパドル」

 

太郎は懸命にパドルした。やだよ、このまま押し流されるのは、やだよ!

 太郎は懸命にパドルした。

 次のうねりがもうすぐそこまで来ている。

 波の斜面は長くそして高く、太郎はそれを這い登るように乗り越えた。腕はもうぶよぶよのゴムのようになって力が入らない。それでも、休むわけにはいかない。

 セットの最後の波は、いちだんと大きかった。カールした波の先端がぐうと空に伸び、太郎にむかって降ってくる。

 太郎は水の上り坂を必死に泳いだ。

 ここで波に捕まるのか、・・・。

 太郎の体にはもう力が残ってはいなかった。一度目のパドル・アウト失敗と二度目のここまでとで、すべて使い果たしていた。

 やだよ、このまま押し流されるのは、やだよ!

 波が落ちてくる瞬間、太郎の手はボードを下に押しつけていた。ガン・ボードは薄くなった水の壁を突き破り、波が崩れる直前に太郎の体はその反対側に出た。

 抜けた!

 塩水をかぶった目を見開くと、そこには白いしぶきとは無縁の青い海が広がっていた。

 太郎はボードにまたがって息を整えた。

 オフ・ショアの風に撫でられた海原が、ゆるやかに上下して来る。すぐそばで、これがあんなにも激しく崩れるのが信じられないほどの静けさだ。

 うねりが登りつめると、その頂きからラ・プンタがすべて見渡せた。岬の形に添って、波を待つサーファーがポツリポツリと並ぶ。

 その中に、太郎は見慣れた人影を認めた。

 そして、思わず笑ってしまった。

 ハハハ、昨日の夜はあんなことを言ってたくせに、・・・。

 ピートは、特大のガン・ボードにまたがり揺れていた。岸から遠く離れた、普段なら波の割れない場所だ。

 太郎は、早くその列に加わろうと再びパドルを始めた。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!