サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−7「どちらが大切なの?」

 

「◯◯◯と、サーフィンと、どっちが大切なの?!」 「馬鹿な質問をするんじゃない!」

 闇の中に、波の音が轟いた。

 落ち着かなかった。独りでいると、明日と、そのあとのことを考えそうで嫌だった。が、アニタのそばにはもっといたくなかった。

 ピートと話でもすれば、気がまぎれるかも、・・・。

 太郎は丘の小径を静かにのぼった。

 ピートの家の焼け跡は、すでに草が何重にもおおっていた。その草の一画をなぎ倒して、テントが張られていた。ランプの光に内側から照らされて、それはポッと暗闇に浮かんでいた。

 「逃げましょう!」

 太郎が二人に呼びかけようとしたとき、中からヘスーサの声がした。それは、押し殺したような低い声だったが、薄い布を通って外に漏れてきた。

 「警察は、私が、今、ここ、ラ・プンタで、こうしていることぐらい、すでに知っているにきまってるわ」

 「ああ、奴らは知っているだろう」

 ピートの声には、どこか怒っているようなところがあった。

 「今、この瞬間に、警察が踏み込んできてもおかしくないのよ」

 「わかっている」

 「さあ、支度をして。テントをたたみましょう。ポチュートラまでたどり着けば、仲間の車でチャパスまで送ってもらえるわ」

 「・・・」

 「ピート、あなたの気持ちが解らないわけじゃないわ。明日が特別な波の日だってことは、知ってる。あなたがそのためにここに戻って来たことも、十分承知してるわ。だけど、状況が、状況なのよ!」

 「・・・」

 「サパティスタの戦いと、サーフィンと、どちらが大切なの?!」

 「馬鹿な質問をするんじゃない」

 「じゃ、早く準備して」

 「ああ、・・・。ヘスーサ、悪いが、ジョイントで一服させてくれ。それくらいの時間はあるだろう?」

 テントの中で物音がして、ピートが外に出てくる気配がした。

 太郎はあわてて小径を駆け下りた。太郎が草を踏む音を警察と勘違いしたのか、テントの中の明かりが消えた。

 ・・・、・・・。ひどいよ、ピート! ひどいよ!

 ピートは逃げるのかよ。

 尊敬してたんだぞ、ピート。それを、こんな風に裏切るなんて!

 雲が流れて、大きな月があらわれた。

 ラ・プンタが、さっと明るくなった。

 明日は、満月か、・・・。

 波が、もっと大きくなるぞ。

 満月と新月の時に、潮の干満の差が最大になる。これが、うねりに作用する。

 そうだ。

 太郎は自分の言った言葉を思い出した。

 ピートとは関係ないんだ。

 「僕は、一人ででもニュージーランダーに乗るよ、ピート」

 太郎は丘を見上げた。

 月明かりに、木を縄で結わえただけの十字架が見えた。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!