「決断に自信を持って、毅然とした態度で突っ込む」 海は、それを教えてくれた。僕はもう迷わない。
アニタにはアニタの現実がある。僕には僕の現実がある。アニタは自分の生きる社会の中で大人になっていくんだ。僕も、自分の世界の中で成長しなくてはならない。
さあ、海が教えてくれたことを実行するときが来た。
他の人に解ってもらえなくても良い。
賛成なんかしてもらえなくても構わない。
自分自身の中から湧いてくる気持ちに忠実に行動するんだ。
その時、迷わないこと。
決断に自信を持って、毅然とした態度で突っ込むこと。
「わかった。ピートと一緒にサーフィンはしないよ。だけど、明日、僕は一人で海に出る」
「そんな屁理屈を警察が聞いてくれるわけないよ、タロウ」
「ピートとは、関係ない。ピートがいようがいまいが、僕はニュージーランダーに乗るんだ」
「タロウは自分勝手だわ。タロウが行く場所がなくて困っていたのを助けてあげたのは、アタシたちなのに。タロウのお腹が空かないように食事を世話したのは、誰だと思ってるの? それでも、自分の楽しみのためには、アタシたちがどうなってもかまわないっていうの? タロウは自分勝手よ! 自分勝手な赤ちゃんよ!」
・・・。
乗り越えろ! 乗り越えるんだ! ここでテイク・オフしなかったら、もうチャンスはない!
アニタは、太郎の沈黙を承諾と取ったようだった。
「それでも、僕は波に乗るよ」
太郎がそう言ったとき、アニタは聞こえてきた言葉が信じられないという表情をした。そして、知らん限りの罵り言葉を太郎に浴びせた。太郎はそれを背中に聞きながらレストランテを出た。
アニタは、もう、こんなに汚らしい言葉も知っていたのか、・・・。
少女の罵声は泣き声にかわった。
ママも、あんな風に、心の中でパパを罵ったんだろうか? もしかすると、自分のいない所で、実際に声に出して?
パパが急にいなくなった本当の理由を、僕は知らない。でも、パパに会って、パパが正直に打ち明けてくれたら、それがどんな理由であっても、今の僕ならきっと解ってあげることができると思う。・・・。
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キミの探すものは、ココにある!
コ、コレが欲しかったんだよ!
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小説「ソウル・サーフィン(セネガル・カサマンス州カップスキリング岬にて)」
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旅の準備も、晩ご飯も、届けてくれたら、ありがたい。(M)