サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−3「ウェルカム・ホーム」

 

「ウェルカム・ホーム(よく、この場所に戻ってきてくれたね)」

 ラ・プンタにおりると、やはりピートは波乗りをしていた。

 波は特別に良かったわけではない。ただ、朝、太郎が見たときよりは大きくなっていた。

 太郎はパドル・アウトした。

 近づいてきた太郎の姿を見て、ピートは手を上げた。太郎はうなずいてパドルを続けた。そして、ラインナップでピートの脇に並ぶのを待って声をかけた。

 「ハイ、ピート」

 「ハイ、タロウ。ハウ・アー・ユー・ドゥーイン?」

 「ノット・バッド。アンド・ユー?」

 「アイム・ファイン」

 「ウェルカム・バック(よく戻ってきてくれたね)」

 と言って、またいだボードのバランスを取りながら、太郎は右手を差し出した。

 「サンクス、ベリー・マッチ」

 ピートはそれを強く握り返した。

 形式的な挨拶を交わすと、それがあまりに型どおりだったので二人は笑ってしまった。

 「ウェルカム・ホーム(よく、この場所に戻ってきてくれたね)」

 「サンクス、マイ・フレンド。サンク・ユー、リアリイ」

 二人は大笑いしながら抱き合うと、そのまま海に落ちた。持ち主が急にいなくなった二枚のボードが、水に跳ねてぶつかった。

 その日の午後、二人はずっと波乗りをして過ごした。

 海に入るのは久しぶりだと言うピートが、カット・バックを華麗にきめる。と、太郎もそれに続いた。波を激しく削るとまではいかないが、太郎なりに一つの波をメイクする。

 「タロウ、私がいないうちに、ずいぶんと上達したな」

 「ありがとう、ピート。誉めてくれて。・・・。だけど、今、僕は、こうやって友達と同じ波が楽しめることがで、充分嬉しいんだ。それで、充分なんだ」

 ためしに、太郎はインサイドの小さなライト・ハンダーに乗ってみた。腹ばいでとはいうものの、半欠けボードで初めて波を滑った場所だ。小さなショア・ブレイクが幼い頃の遊び場のように懐かしい。

 あの頃は、板の上に手をついて立ち上がりながら曲がるなんて、同時にできっこないと思ったものだ。

 それが今、無意識のうちの一つの動作として、自然に体が動く。

 左足に思いっきり体重をのせて波からスピードを引き出すと、無理だと諦めねばならなかった部分までボードが滑っていってくれる。

 「タロウ、いよいよだな」

 「イエス」

 ピートの口調に自分を一人前と認めてくれたような響きを感じて、太郎は満足すると同時に、緊張した。

 いよいよだ。・・・。

 僕は、もう逃げたりはしない。

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