「お前はこれからどうするんだ?」 「僕はラ・プンタ(スペイン語で『岬』の意味)に戻ります」

 歩兵隊のラッパが鳴った。

 「タロウ、お前はこれからどうするんだ? あの女にくっついて行進か?」

 「いいえ。僕はラ・プンタに戻ります」

 そう。僕はラ・プンタに行くんだ!

 「そうかい。・・・。あんな女と関わり合って、命でもなくしたら、バカみたいだからな。タロウ、お前もせいぜい気をつけろよ」

 やぶにらみは「アスタ・ルエゴ」と手を振ると、人混みを離れてアドキンの裏手の草むらに消えた。

 さあ。行こう。

 太郎はカレテラを歩きだした。

 初めてこの道を通ったとき、僕はただ「ラ・プンタ」という場所を見たかっただけだった。パパが最後に訪れた場所が、ただ見たかった。それだけだった。

 家で家政婦をしてたときから、ルピータは少し変わってるな、って思ってたけど、今は、感謝しなくちゃ。オアハカ生まれの不思議なお婆さんの言うとおりになったんだから。

 高台から、ビーチ・ブレイクが見えた。

 最初にあの波を見たとき、大きな波だな、と僕は思った。この場所に立つほとんどの人が、きっと同じ事を思うに違いない。だけど、その中の何人が、その波のもつ意味を解ってるだろうか? 快感と恐怖、そして、美しさ。僕だって、まだ、よく解ってはいない。まだ、僕には早すぎる。このビーチ・ブレイクに挑む準備は、まだできていない。

 でも、僕は、このカレテラがどこに通じているか知ってる。

 ここをまっすぐ行けば、ラ・プンタだ。

 ラ・プンタに行けば何が僕を待っているか、知ってる。

 太郎は空を見上げた。太陽は、天の最も高い所で燃えていた。

 道には今日も赫土があふれ、子供達が作業をしていた。ボードを抱えて歩く太郎に気づくと、子供の一人がサーフィンの真似をした。

 「ブエナ・オラ!」

 別の子供が呼びかける。

 太郎は板の先を軽く上げてそれに答えると、先を急いだ。

 長い下り坂をおり、学校の脇の大きな木の所から直接部落に入らずに、まっすぐ歩き続ける。ついこの間まで枯れていたのが嘘のように、草原が緑に潤っていた。草は海の眺めをおおうほどにまで、背高く伸びていた。茂った草に、岬への小径を見失いそうになるのをかろうじて見つけて、太郎はそこをまがった。

 ボードで草をかき分けながらしばらく行って、太郎は立ち止まった。

 若草色の丘に、木を組んだだけの即席の十字架が見えた。

 「ピートが帰ってきた」

 太郎は緊張した。

 もちろんピートが帰ってきたことは嬉しい。しかし、ピートが帰ってきたということは、ニュージーランダーが来るということなのだ。

 脇腹の肉がきゅうと引き締まるのを太郎は感じた。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!