サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−1「下水と電気を!」

 

「ラ・プンタに下水と電気を! ホテルの環境破壊を許すな!」 デモ隊は行進する。

            第五章


 脚の傷は、痕こそ残ったものの、無事に癒えた。これはみな、アニタが毎日新鮮なアロエに換えてくれたおかげだ、と太郎は思っている。

 波乗りも続けている。ラ・プンタに波がないときは、ビーチ・ブレイクにも出かけている。

 ビーチ・ブレイクからの帰り際、デモのためカレテラに人があふれていたので、今日が五月一日だと判った。

 太郎がボードを抱えてラ・プンタへ歩きだしたとき、人垣を割るようにデモ隊がやってきた。

 「労働者の権利を守れ、政府は人権を尊重しろ」

 ラウド・スピーカーに増幅されて届いてきたのは、聞き覚えのある声だった。

 「ラ・プンタに下水と電気を! ホテルの環境破壊を許すな!」

 デモの先頭に立っていたのは、ヘスーサだった。

 行列は、ゆっくりと十字路から歩兵隊の基地へ進んでいった。怖くてデモに加わる勇気のない者も行進についていくので、道は人でごった返していた。

 関係のない太郎は早くラ・プンタに戻りたいのだが、人混みの中を大きなボードを脇に歩くのは容易ではなかった。

 その興味本位の人の群れの中に、やぶにらみがいた。むこうも太郎に気がついて、人をかき分けて近づいてきた。

 「あの女が帰ってくると、またトラブルだよ!」

 混雑の中でしわがれた声が怒鳴った。

 「タロウ、ドナがDF(メキシコ・シティ)で働いてるのを知ってるかい?」

 「生きてるんですか?!」

 「ああ」

 「良かった! ドナは警察に殺されたかもしれない、って思ってたから」

 「そっちのほうが良かったかもな」

 「ドナは、メキシコ・シティで何をしてるんです?!」

 「田舎の、貧しい家の、ろくに学問もしなかったような娘ができることといったら、ひとつしかないよ。タロウ、お前だって、ガキじゃないんだ。それくらいのこと、わかるだろう!」

 拡声器の声が政治のスローガンを叫ぶのが聞こえてきた。

 「あの女さえあの娘をそそのかさなければ、ドナはプエルトで家族と一緒に暮らすことができたんだ」

 「・・・」

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!