サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−23「妙な英語でソーリー」

 

 「アイ・アム・ソーリー」 妙に正確な英語を話しながら近づいてきたのは、ドイツ人『川』サーファーだった。

 太郎がテイク・オフした瞬間に、黒い影が目の前に降ってきた。

 危ない!

 太郎はのけぞるようにして、崩れる波の壁に体をぶつけた。サーフ・ボードは前に吹き飛んで、足に鈍い感触が残った。

 白い物体が顔をかすめる。

 何だと思う間もなく太郎は波の先に吸い上げられて、一気に赤土の底に叩きつけられた。背中から落ちたところに、多量の水が降ってくる。

 波に巻かれながら、太郎は冷静さを保っていた。

 今日のコンディションなら、僕はなんとかなる。それよりも、むこうは大丈夫か?

 ドロップ・インしてきた相手を心配する余裕すらあった。

 水の中を嫌というほど転がされて、やっと岸に立ったとき、まずさがしたのはそのサーファーだった。

 初心者らしき男はショア・ブレイクに足を取られて、よろけながら岸に上がってきた。

 「アイ・アム・ソーリー。大丈夫ですか?」

 妙に正確な英語を話しながら近づいてきたのは、例のドイツ人だった。

 ドイツ人の視線の先が太郎の足元に向けられている。そこで初めて、自分のむこうずねから血が流れているのに気づいた。

 手で触れてみると、傷は深くなかった。

 「俺のフィンが当たったのかな?」

 「僕のかもしれません」

 「君がピークから乗ってくるのが見えて、テイク・オフをやめたんだけど、遅かった。アイ・アム・ソーリー。医者に連れていこうか」

 「だいじょうぶ。気にしないで」

 血はそのうち止まるだろうと太郎は思った。

 「あなたのほうは、大丈夫ですか?」

 「怪我はないけどね。・・・。見てよ」

 ドイツ人は苦い笑顔を作った。彼が持ち上げたボードには、太郎のフィンが切り抜いた筋が三カ所入っていた。

 「本当に医者に行かなくても大丈夫かい?」

 「ドント・ウォーリー」

 太郎はカレテラにむかって歩きだした。足を踏みだすときに、少し痛みが走った。

 「ヘイ!」

 ドイツ人が呼んだ。

 太郎が振り返ると、男は「ハング・ルース」を手で作って言った。

 「テイク・イット・イージー、マイ・フレンド」

 やれやれ。

 太郎は手を振ってそれに答えた。

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  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!