サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−22「ドイツ人もハング・ルース」

 

「ドイツじゃ、川でサーフィンするんだよな、リバー・サーファー」 ドイツ人は、ハング・ルースでそれに答える。

 波の小さい今日は、答えを出すためのチューブはなかった。

 こんな日は地元のサーファーは出てこないで、大きい日に一日中波乗りができるよう陸での仕事を片づける。このブレイクに慣れていない旅行者だけが波を待ち、様々な言語で話しながら様々なレベルのサーフィンをしていた。

 大きい波の日も危ないけど、小さくて混雑した日も安全じゃないんだよな。

 目の前にドロップ・インしてくる初心者をかわしながら、太郎は波乗りをしなくてはならなかった。

  混雑は苦手だ。人をよけながらだと、ターンがきまった歓びが半分になっちゃうよ。

 そういう時は早めに切り上げることも、ビーチ・ブレイクでは必要だった。

 ホロウだ。これもホロウだ。・・・。

 少しも疲れていない腕に、サーフ・ボードが軽い。

 「プエルト・エスコンディードなんて、詐欺だぜ!」

 砂浜を歩く太郎に、そんな言葉が聞こえてきた。日除けの中からだ。太郎がのぞくと、それはさっきの初心者の一人だった。デッキ・チェアに横になった白人の少年は、腕に刺青をして膝丈のトランクスをはいていた。

 「ビールを買ってこいよ」

 タトゥーの少年が、そばにいたメキシコ人のサーファーに金を手渡した。

 「オーケー、ボス」

 ニヤリと笑うと、メキシカンは自分より二まわりも年下の男の手から紙幣を取った。そして、砂浜に散らばったビールの空き瓶を集めはじめた。

 「メキシカン・パイプラインなんて偉そうなこと言うけど、たいしたことないよな」

 「ヘイ。お前はドイツから来たんだろ。ドイツに波なんかあるのか?」

 隣で横になっていたのは、あのニュー・ジーランドのサーファーだった。

 「ドイツじゃ川でサーフィンするんだよな、リバー・サーファー。『サーファー』マガジンで読んだぜ、メイト」

 「カモン、キーウィー。ギブ・ミー・ア・ブレイク。ドイツは確かに波は無いけどさ。ハワイのビッグ・ウェーブに比べたら、プエルト・エスコンディードなんて子供だましだって言いたいんだ」

 地元のサーファーは、うつむいて瓶を集めていた。それが終わると、集めた瓶を抱えて、黙ってビールを買いに出ていった。

 「サンクス」

 ドイツ人がメキシカンの背中にむかって言った。握った手から親指と小指を立てて、サインを作っている。

 ドイツ人の「ハング・ルース」。

 太郎は、金髪のカツラをかぶった日本人の芝居を見るような気色の悪さを、それに感じた。

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