サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−20「海を裏切るな」

 

「家族を食わせるためには、グリンゴに頭下げなきゃなんねえんだ。でも、海は裏切るなよ」

 「知ってるよ。お前が何が言いたいか。そうさ。俺だってわかってる、何がいけねえのか。だがなあ、生きるためには、やんなきゃなんねえんだ。そうしないと、家族を喰わしていけねえ。あいつらの言うことをきかなきゃ、俺のカバーニャ・パコロロなんて簡単につぶされちまう。・・・」

 パコロロは太陽をにらんだ。陽の光が男の目に小さく点ったように、太郎には見えた。

 「こんなんじゃ、なかったんだ! こんなんじゃよお! 初めてプエルトで波乗りをした頃はよ、すべてが単純で、すべてが面白かった。目の前の海で魚を捕って、その辺の木になっている物を喰って、毎日波乗りしていた。他にサーファーなんかいやしない。俺と、ときどき北から流れてくるグリンゴのサーファーだ。あいつらは魚を捕るのが下手だから、俺がつかまえてマチェーテでさばいてやった。手や体が血だらけになったが、そんなの気にならねえ。砂浜でたき火して焼けば、めっぽう美味く喰えたもんだ。その代わり、やつらはいらなくなったボードやワックスを置いてってくれた。・・・。ホテルなんか一軒も無かった時代の話さ。おとぎ話に聞こえるだろ」

 パコロロの目から、すっと光が消えた。

 「お前はいつまでここにいるんだ、ハポネシート?」

 「わかりません。貴重品を全部取られてしまって、航空券も無いんです」

 「いいなあ。何も持ってないのかあ。何もなきゃ、何も守る必要はねえからなあ。グリンゴにペコペコ頭下げる必要もねえ」

 パコロロは沖を見た。

 「お前はサーフィンが好きか?」

 「はい」

 「好きか。ムイ・ビエン。サーフィンはいいよな。ハポネシート、波乗りが好きだったらよ、海を裏切るんじゃねえぞ。一度裏切ったらよお、もう二度と海は仲間にしてくれねえ」

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