サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−16「パコロロの人生」

 

「ジェリー・ロペス。世界で一番サーフィンのうまい男だ。・・・。俺の息子。私立学校の寄宿舎にいる」

 ラックに立てられた板は全部で二十枚を越えるだろうか。

 ・・・。まるで、博物館だ。

 こんなに形の違うサーフ・ボードが一カ所に集まっているのを、太郎は見たことがなかった。

 隣り合った壁の棚には、トロフィーがいくつか飾られていた。

 「若い頃のだ。今はもう大会なんかには出れないがな。この棚に、パイプライン・マスターズのサムライ・ヘルメットを置きたかったが、それはかなわなかった」

 棚には、美しい貝殻の枠に入れられた写真も飾られていた。

 「見ろ。俺の家族だ」

 パコロロが美しい女性と男の子の肩を抱いていた。

 「息子はメキシコ・シティの私立学校に行っている。妻は、息子に会いに行っていて今日はいない」

 その脇には、サーフ・ボードを立ててポーズをとる二人の若者の写真があった。一人は、背の低い口髭を生やした黒髪の男で、もう一人はどうやらパコロロのようだった。

 「ジェリー・ロペス。知ってるか? 世界で一番サーフィンのうまい男だ」

 パコロロはその写真を愛おしそうに手に取った。

 「ハワイにいたときの写真だ。奴と一緒に、ノース・ショアを乗りまくった。このカバーニャをパコロロと名づけたのは、その時の思い出のためだ。ハワイでは、«葉っぱ»をパカロロと呼ぶんだ。俺はパトリシオで、メキシコでは短くパコだろ。パコロロは、ちょっとした言葉の遊びだ。ハワイは、地上で二番目に良い場所だな。俺は大好きだ。最高の場所はどこかだって? それはメヒコにきまってるじゃないか」

 パコロロは冷蔵庫からビールを取り出すと、太郎を二階に誘った。そして、ハンモックをまたぐと、さっさと横になった。

 音をたてて降っていた雨は、降り始めと同じように唐突に止んだ。雲の下に夕陽が顔を出し、水平線に沈もうとしていた。

 「取れよ」

 と言って、パコロロはつめたく冷えたコロニータを太郎に手渡した。そして、湿気でボロボロになったサーフィン雑誌を、空いていたハンモックの網に投げた。

 太郎はそれを手にとって横になった。

 妙な懐かしさが胸にわいてきた。そのアメリカの雑誌の日本版は、バイトをしていたコンビニでも扱っていた。父親の写真と同じ岬が載っているのを見て、「プエルト・エスコンディード」の名を知ったのも、その雑誌でだった。

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