サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−9「もう、サーフィンが」

 

「もう、サーフィンができなくなっちゃったのかな?」

 「ノー。もちろん、ノー。岩が怖かったら、サーフィンなんかできないよ。でっかい波に乗りたいんだけど、なかなか来てくれないよ」

 そう言いながらテイク・オフを試みて、波の悪さに諦める。

 「くそっ!」

 「あせるな、レヒーノ。セットの波が来るから」

 水平線が黒ずんで、大きな波が近づいてきた。

 「さあ 、お前に譲ったぞ」

 レヒーノは勇んで波に向かっていく。間合いを計って向きなおって、パドル。そして、テイク・オフ。

 「そして、テイク・オフ」のはずが、レヒーノの体は前にのめるように波の底に落ちた。

 少年の見事なパーリングを見て、太郎は笑った。笑いながら後から来た波に乗ると、浜までメイクした。

 「次はうまくいくさ」

 ラインナップに戻ってきて太郎が声をかけると、

 「もちろん、シー」

 と少年はふてくされたように答えた。

 レヒーノがセットの波が再び来るのを待ってテイク・オフしたとき、太郎は今度こそ乗ったと思った。

 しかし、本来なら姿を現すはずである波の背に、レヒーノはやって来なかった。

 また落ちたのか、・・・。

 太郎はそれから何度となく岸と沖を往復したが、レヒーノが波の上に立つのを一度も見ることはなかった。

 太郎がインサイドにまだいるとき、レヒーノのテイク・オフを正面から見た。

 波のチョイス、パドルのスピード、テイク・オフのポジション、ボードが滑りだすまですべては完璧なのに、レヒーノはその上に立てなかった。曲がった左足がしっかりボードをとらえずに、抜けるように滑ってしまう。体重が足にまったくのらなかった。それは、まるで足の甲でボードに立とうとするかのようだった。カールのまっただ中で前足が使えなければ、頭から水に落ちる以外ない。

 インパクト・ゾーンにいた太郎は、崩れた波をまともに受けて砂浜まで流された。パーリングしたレヒーノも、一緒に岸に押しやられた。

 水から立ち上がった二人の目が合った。

 「タロウ、どんなにやっても、ボク、立てないよ」

 「・・・」

 「もう、サーフィンができなくなっちゃったのかな?」

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