サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−4「俺たちのビーチ」

 

グリンゴは、来るな。この『ビーチ・ブレイク』は、俺たちメヒカーノ(メキシコ人)のものだ。

 罵り合う声が聞こえたと思ったら、波打ち際で男が二人にらみ合っている。ボードにまたがったまま片方がつかみかかると、二人ともバランスを失って水に落ちた。先に立ち上がったほうがボードを投げつけ、相手はかろうじてそれをかわした。

 「あれは俺の波だぞ! 馬鹿野郎!」

 「ノー! 波は誰のものでもねえ! 海はみんなのもんだ!」

 一人はアメリカ人で、もう一人はオアハカの若者だった。

 先に殴りつけたのはアメリカンのサーファーだった。そして、倒れた男を続けざまに殴った。

 「馬鹿の茶色い猿。メキシカンなんかに、サーフィンする権利はないんだよ」

 と言って、白い肌の男は相手の顔に唾を吐きつけた。

 若いインディオはよろよろと立ち上がると、近くの茂みに走り込んだ。

 「臆病者!」

 アメリカ人は勝ち誇ったように言うと、砂浜に打ち上げられたサーフ・ボードを拾い上げた。

 再び沖に出ようと白人のサーファーが背を向けたとき、茂みからインディオがマチェーテを持って戻ってきた。

 「チンガ・トゥー・マードレ!」

 刃(やいば)が光った。

 白人の背後からその腿めがけてマチェーテを振り下ろすと、にぶい音がして血がほとばしった。肉と一緒にリーシュが切れて、引いていく水に流された。

 若いインディオは、マチェーテを高く構えている。

 アメリカンは膝をかかえてうずくまり、オアハカの若者を見上げた。

 「ノー、ノー。プリーズ・ノー」

 その表情は、恐怖でこわばっている。

 「グリンゴは、来るんじゃねえ! この『ビーチ・ブレイク』は、俺たちのもんだ!」

 インディオはサーフ・ボードをアメリカンから取り上げると、目の前で踏みつけ二つに割った。それから、どこからか灯油とマッチを見つけてくると、サーフ・ボードに火を点けた。

 ボードは勢いよく燃え、中の発泡スチロールが黒い煙を上げて溶けた。

 「よく見ろ。波を呼ぶ儀式だ。これで、大きなうねりが来る」

 若者は、太郎たち野次馬にむかって真面目に言った。

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