サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−3「ドロップ・イン」

 

「下手くそ。ドロップ・インするな! 俺のほうがピークに近かったんだ。あれは、俺の波だ」

 セットの波が来た。

 波のピークにむかって全員で競走だ。

 ここだ!

 ピークの来るポジションを太郎なりに予測しようとするのだが、波はその通りに崩れてくれない。より正確に読んだサーファーが、脇からすっと乗ってしまう。

 それがこう何回も続いては、太郎も我慢しきれなくなる。

 誰かが脇でテイク・オフしようとするのを知りながら、波に乗ろうとした。

 「カモン、下手くそ。ドロップ・インするな!」

 太郎をよけようとして、水に落ちた男が怒鳴った。

 「俺のほうがピークに近かったんだ。あれは、俺の波だ」

 「ごめんなさい」

 男の剣幕に、太郎は謝るしかない。

 太郎は男のそばを離れるように沖にパドルした。

 そして、もう十五分待った。

 小さなセットが来て、太郎よりも岸に近いところで割れた。

 そして、また十五分待った。

 同じような波が岸のそばで割れた。

 もう大きなセットは来ないのかもしれない。あともう一回だけ待って、やめにしよう。

 再び十五分待った。

 今度こそ、少し沖で待っていた太郎の番だった。

 波のピークが太郎の位置に合わせて入ってきた。水面がほんのわずかせり上がって近づいてくる。

 太郎は浜へパドルを始めた。

 力のないうねりは太郎の体をなんとか持ち上げたが、ボードが滑りだすほどの角度がない。

 ダメかなと思いながらも太郎は懸命にパドルして、あきらめかけたときに板がスライドしだした。

 しかし、そこまでだった。

 乗った!

 と思った瞬間に波が閉じ、それで終わりだった。

 太郎は何も間違った動作をしていない。それが、今日の波での精一杯のライドだった。

 テイク・オフだけのサーフィン! こんなののために何時間も待つなんて、もうやだよ。

 太郎はホワイト・ウォーターの中を直進しただけで、岸に上がってしまった。

 その直後だった。

 「ファック・ユー!」

 「ペンデホ!」

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!