サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−53「ガン・ボードで」

 

「タロウ、これでニュージーランダーに乗れ」 ピートはガン・ボードを残して去った。

 「偶然とは皮肉なものだと思わないか、タロウ? 彼女たちがパコロロの所を選ぶとはな」

 「さあ、急がなくては、私たちも危ないのよ」

 ヘスーサが太郎の頬に右左とキスをした。

 「アディオス、ヘスーサ」

 「タロウ、こういうとき『さよなら』とは言わないのよ。『また会う日まで』と言うものよ」

 「ホントにまた会えるの?」

 太郎はピートを見た。

 「じゃ、戻ってくるんだね。いつ戻ってくるの?」

 ピートはまた答えなかった。

 「ごめんなさい。ワタシの言い方が悪かったわ。そう言う意味じゃなくて、・・・、いつか、また、どこかで会えるという意味」

 謝罪のつもりでヘスーサが太郎の唇に自分の唇を軽く重ねると、その目尻から涙がすっと線を引いた。

 「アスタ・ルエゴ。タロウ」

 最後に一度強く太郎の手を握りしめると、ヘスーサは車に乗った。

 運転席の男がエンジンをかけた。紫の空は、刻々とその暗さを増してきている。もう出発しなければならない時間だった。

 ピートは車の荷台にまわり、積んであったガン・ボードを引き抜いた。そして、それを太郎に差し出した。

 「タロウ、君にあげよう」

 「僕に?」

 「これでニュージーランダーに乗れ」

 「ぼ、僕はまだ」

 ピートは小さく首を振ってみせた。

 戻る日のことは、ピートは敢えて言わなかった。しかし、ピートがニュージーランダーに乗りに来ることは太郎にはわかっていた。そうに決まっているし、そうでなくては絶対ならなかった。

 ジープは砂ぼこりを立てて去っていった。

 太郎の手にはガン・ボードが残った。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!