「火事だ!」 沖の太郎にも燃える炎がはっきりと見えた。

 白く細い煙が丘にたなびいていた。煙が海にむかって漂ってくるのは、オフ・ショアの風が吹いているしるしだ。

 レヒーノのワイプ・アウト以来、岩に近づくのは怖いなと太郎はあらためて思うようになった。「発射台」で待ちさえすれば確実に乗れる波を、あれから何度ものがした。

 パコロロはあの日一日来たきりで、二度と姿を現さなかった。

 ・・・。だけど、何だろう?

 丘の間から昇る煙が、ますます太くなっていく。水の中の太郎のところにまで、物が焼ける臭いがとどいた。

 ピートの家の辺りからだ。たき火かな? でも、たき火であんなに激しく煙がたつんだろうか? ・・・。

 煙はだんだん黒くなっていき、黒煙の中に炎が混じるようになった。

 「火事だ!」

 火はひとたび大きくなると、もう勢いが止まらなかった。沖の太郎にも燃える炎がはっきりと見えた。

 ピートの家かもしれない、・・・?

 太郎はやって来た波を岸までライドすると、砂浜を走った。無我夢中で丘を駆け上がると、燃えているのはやはりピートの家だった。冬の乾ききった草木を焦がし、火はますます広がりそうだった。

 右往左往する村人の中に、ピートとヘスーサが立っていた。二人は燃え上がる炎を静かに見つめていた。

 「ピート! ピート!」

 かん高い太郎の呼び声に、二人はゆっくりと振り返った。

 「ピートの、ピートの家が!」

 ピートは小さくうなづいた。

 「落ち着くんだ、タロウ。そんな物、この丘に持ってきたって、ここには波は来ないぞ」

 慌てた太郎は、サーフ・ボードを抱えたままでいた。

 「ボードは熱に弱い。火の粉で表面のグラスを傷めないように気をつけろ」

 そう言って笑うと、ピートはヘスーサを優しく見つめた。そして、穏やかに、しかし、きっぱりと言った。

 「そろそろ時期が来たな」

 ヘスーサは炎をにらんだ。

 三人の目の前に、白い十字架が大きな音をたてて焼け落ちた。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!