サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−49「レヒーノの骨折」

 

「危ない! 閉じるぞ!」 波は『発射台』に当たって砕け、白く荒れ狂うスープとなった。

 セットの二番目、三番目の波が続けざまに崩れていった。そのあとに、黒いレヒーノの頭を見たとき、太郎は少しホッとした。

 だけど、泳ぎ方が変だよ!

 泳ぎの得意なレヒーノが、水面から顔を出すだけで精一杯なのだ。グシャグシャに荒れた波の中で、何度となく水をかぶり苦しそうだ。

 すでに、ピートは、レヒーノを助けるためにパドルしはじめていた。少年の体のそばまで来ると、ボードから降り、それをゆっくりと差し出した。

 レヒーノはボードにつかまると、来た波に体をゆだねた。そして、かろうじて岸までたどり着くと、砂浜に触れたとたん崩れるように倒れた。

 怪我したんだ!

 太郎も、ちょうど来た小さな波に身をまかせ、腹ばいのまま岸へ滑った。

 「だいじょうぶ、レヒーノ?」

 「どうやら、足首の骨を折ったようだ」

 目を閉じて歯を食いしばるレヒーノに代わって、ピートが答えた。

 「立てるか?」

 首を横に振るレヒーノを起こし、ピートは背中にせおうと、レストランテへと歩きだした。

 「アーッ! 痛いよ!」

 振動で激痛が走り、少年は大声で悲鳴をあげた。

 「痛いよ、痛いよ!」

 「レヒーノ! レヒーノ!」

 泣き声を聞きつけて、小屋からイネスが駆けだしてきた。

 ピートの背中で少年は苦しみ続けている。その姿を見てイネスは噛みつかんばかりに怒鳴った。

 「アタシの息子に何をしたんだ、グリンゴ!」

 「ノー、イネス母ちゃん。レヒーノは波に岩へ叩きつけられたんです」

 「お前のせいだぞ、グリンゴ! お前がいけないんだ! お前がやったも同じなんだ! アタシの息子から手を離せ!」

 ピートは黙って小屋の中までレヒーノを運んだ。

 レヒーノの体をピートがゆっくりと横たえようとするのを、イネスは奪って抱きしめた。

 「おお、レヒニート」

 「母ちゃん、痛いよお」

 イネスがレヒーノの頬にキスをした。

 「もう大丈夫だよ。心配はおよし。母ちゃんが守ってあげるからね」

 何遍もキスをくり返した後で、イネスはピートをにらんだ。

 「出てってくれ! アタシたちの前から消えてくれ!」

 「イネス母ちゃん! ピートはレヒーノを助けたのに」

 「そんなことは、どうだって良いんだ。とにかく、このグリンゴにこの辺をうろついていてもらいたくないんだよ」

 「・・・」

 ピートは何も言わずに小屋を出ていった。

 太郎は、ピートの後ろ姿と苦しむレヒーノをしばし交互に眺めていた。ピートの姿が丘の茂みの中に消えると、太郎は海を振り返った。

 岬では、パコロロが同じ姿勢のまま沖を向いていた。

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