サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−45「波や鮫とのつきあい」

 

大きく上下するうねりに微動だにしない男の背中が、波や鮫とのつきあいが長年に渡ることを語っていた。

 波や鮫でも怖がってるのかな?

 太郎は初めそう感じたが、ボードをまたぐ中年男を見直して、そのどちらでもないことを悟った。揺れる波の上でバランスを取る姿勢には余裕があり、初心者のそれとはまったく違っていた。大きく上下するうねりに微動だにしない背中が、波や鮫とのつきあいが長年に渡ることを語っていた。

 一瞬だけぼんやりとした視線を向けた男は、もう二度と振り返らなかった。ただ沖を見つめて、やって来るうねりを眺めているだけだった。男の雰囲気が空にも伝わるのだろうか。朝焼けに輝いた雲は晴れようとはせず、空一面に広がる気配を示していた。

 セットの波が来た。

 薄く切り立った青い壁が水平線から近づいてくる。先端をひらひらと羽ばたかせながら、太郎を取り囲むように迫る。これは、理想的な波のしるしだ。

 インディオの男は、この波にさえも乗る仕草を見せなかった。

 そこまで、海を無視しようと言うのなら仕方がない。

 太郎は、テイク・オフするポジションへパドルした。波の崩れかたを確かめて、ボードの位置を微妙に調節する。

 壁の端が沖の岩に当たって崩れだした。その白い波が左から来て、太郎の体をすくい上げる。ガラスのように滑らかな水面が太郎の胸の下で盛り上がる。

 完璧は、起きるときには実にあっさりと起きてしまう。

 カールした波の先端が、体を前に押し出してくれた。右手、左手と軽く水をかくと、ボードは簡単にスライドしはじめる。

 波は思ったほど掘れてないぞ。

 直立した壁に見えた波が、実は緩やかな斜面であることがわかった。

 だけど、あの目は、・・・。

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  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!