オフ・ショアの風の流れていくその先から、うねりは静かにやってくる。まるで絹のようだ。

 風は岸からゆっくりと吹いていた。オフ・ショアの風の流れていくその先から、うねりは静かにやってくる。水面には白い霧がたち、鉛色のうねりは水に晒される一枚の布のようだ。その鈍い色合いの中で、男は古く傷んだ長すぎるボードとともに上下していた。

 先に来た彼の邪魔をしないようにと、太郎は少し離れたところで波を待った。

 波は、男の所でタイミング良く盛り上がった。浮力が大きいロング・ボードは、パドルするときのスピードが圧倒的に速い。だから、ショート・ボードでは待つことのできない沖合いから、テイク・オフにかかることができる。

 ぴったりの場所で待っているのに、どうしてあの人は波に乗ろうとしないんだろう?

 いくつもの波を男がやり過ごすのを見て、太郎は思った。男がやる気なげに見送った波が美しく割れるのを見続けると、落ち着かない気分になった。

 せっかく海が作ってくれてるのに、・・・。

 東の山あいから太陽がのぞいた。光が水面に射すと、男の姿がはっきりと見えるようになった。

 朝のラ・プンタはいつもと変わらぬ清々しさなのに、男のまわりだけどんよりと曇った雰囲気が漂っていた。絹のように滑らかに揺れてきたうねりも、男の脇を通過したとたんに輝きが消えるように見えた。

 もう、待てないよ。

 太郎がテイク・オフ・ポイントに向かおうとしたときだった。男が振り返って太郎を見た。

 ・・・。

 いや、見てるのは僕じゃない。

 どこか遠くを見るような男の眼差しに、太郎はドキリとした。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!