サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−43「陸は陸、海は海」

 

陸の上での約束は、陸の上では守る。しかし、海の上では別なのだ。

 年が変わった。

 ナビダの後しばらくボードに手を触れなかった太郎だが、もう我慢ができなくなっていた。

 「ピートとつき合わないと約束したことはしたけど、サーフィンをしないと約束したわけじゃない」と太郎は自分に言い聞かせて海に出た。

 イネスは何も言わなかった。

 ピートの家に遊びにこそ行かなかったが、ラ・プンタのラインナップで並べば太郎はそれまでと同じように彼と会話を交わした。

 「ヘイ、タロウ、ハウ・アー・ユー・ドゥーイン?」

 「ファイン。サンクス」

 「イイ波が来たぞ。お前のだ」

 「オーケイ、ピート」

 陸の上での約束は、陸の上では守る。でも、海の上では別なのだ。

 一月も半ばを過ぎ、海の水温はかなり下がるようになってきていた。熱帯だというのに、少し風が吹こうものなら涼しさで裸けた皮膚に鳥肌が立った。

 そんな朝に、誰よりも早く海に出る。

 一日の最初のライドがその日の最高のライドだ、と太郎はこのごろ思うようになっていた。まだ疲れていない両腕が生み出すスピードは、テイク・オフのときに充分な余裕を与えてくれる。余裕を持って立ち上がれば、当然ボードの扱いにも自信がもてる。太郎には太郎なりのグッド・ライドだ。

 そして、朝風に整えられた水面に思い通りの弧を描いた後で、ヒンヤリとした海に落ちていくのは最高の気分だった。いま終えたばかりのライディングの快感が、冷たい水に触れたとたんに体の中できゅっと固まるような気がするのだった。

 その日も、そんなライドの予感とともに太郎は沖に出たのだが、驚いたことに未明のラ・プンタには既に波を待つ男がいた。

 ピートかな?

 声をかけようとして、太郎は思いとどまった。ロング・ボードに乗ったずんぐりとした男は、イネスたちと同じような褐色の肌をしていたのだ。

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