やりたいことを本当にやりたかったら、嘘ぐらいつけ。大人になんなよ、坊や。

 翌朝、やぶにらみに体を揺すられて、太郎は目をさました。朝日がようやく東の山に昇ったばかりで、空気が少し冷たかった。太郎は、荷物を枕にして砂の上で体を丸めるように寝ている自分に気づいた。

 「起きな、タロウ。そろそろ人が来るよ」

 目を擦りながら起きあがると、太郎はくしゃみをひとつした。そして、体の節々が痛んだので、両腕を広げて大きく伸びをした。

 「さあ、帰るよ」

 「でも、・・・、僕はどこへ?」

 「ラ・プンタだよ! お前をおいてくれるのは、あのイネスの所しかないだろ!」

 「だけど、・・・」

 「なにグズグズ言ってんだよ! お前、波乗りがしたいんだろ!」

 そんなこと、言われるまでもなかった。

 「だったら、嘘をつくんだよ。『ごめんなさい。もう波乗りはしません。丘の上のグリンゴともつき合いません。だから、家において下さい』ってな」

 やぶにらみの言葉に、太郎の眠気は一気にさめた。

 「いいかい。やりたいことを本当にやりたかったら、嘘をつくんだ。それが大人になるってことなんだからよぉ」

 太郎は、女の、やぶにらみの瞳をじっと見つめた。そこに、年下の少年を揶揄するような感じはなかった。ひとりの女が真摯に諭す光だけがあった。

  「何だよ、その目は、・・・。さあ、行くよ」

 二人が通りを歩きだしたときには、早起きのメキシコの田舎町はとうに目覚めていた。アドキンを、働きに行く者たちが行き来している。

 太郎たちはカレテラの交差点まで戻って、乗り合いトラックに乗った。荷台に座った乗客たちの間に腰を下ろすと、幼い少年が料金を求めに来た。

 「お前、金持ってないんだろう?」

 やぶにらみはビニール製のハンドバッグの中をまさぐった。

 「しょうがねえなあ」

 二人分の硬貨を差しだす声は、優しかった。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!