サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−38「ホテル・サンタ・フェ」

 

「アタシは、イイ男は一度見たら忘れないんだ。あのホテル・サンタ・フェで食事をしてるのを見たよ」

 「追い出されたんなら、日本に帰ればいいじゃないか」

 「お金がないから、・・・」

 「嘘はよしな、タロウ。お金を送ってもらう方法はいくらでもあるさ」

 「・・・」

 「あたしは知ってるよ、お前が日本に帰らない理由。お前も捨てられたんだろ。アタシは男に捨てられ慣れてるから、捨てられた人間はすぐにわかる」

 しわがれた声が今夜はなぜか優しかった。太郎はそれにつられるように甘えて話し出していた。

 「二年前、パパが、・・・」

 太郎は父親が失踪したこと、母親とふたり日本に帰らねばならなかったこと、そして、母の故郷の町での生活を話した。

 「だから、どうしてもラ・プンタをこの目で見なくちゃならなかった。そうしたら、パパがいなくなった理由がわかるような気がしたんです」

 「なるほどね。父親に捨てられたけど、母親を捨てたってわけか」

 「そんな、そんなことはありません! ママを捨てただなんて」

 「でも、ごらんよ。お前は、メキシコに来て、もう、どれくらいになる? 帰りたがらないどころか、自分の居場所も教えてないんだろう?」

 確かに、その通りだった。

 「あいつの息子なら、お前が毎日波乗りをしたくなるのはわかるよ」

 「えっ! あなたは、パパを知ってるんですか?!」

 「ああ、アタシはイイ男は一度見たら忘れないんだ」

 「ど、どこでですか?」

 「すぐそこだよ。あのホテル・サンタ・フェで食事をしてるのを見かけたことがある。それから、しばらくしてからだったかね。アタシを買ったハポネスがいたんだ。おんなじ国から来たのに、こうも違うものかねえ。アタシの客は、腹が出て眼鏡をかけた出っ歯の男だった。あんな不細工な男も珍しいよ。でも、金はたっぷり持ってるみたいだったな。そのハポネスときたら、まったくの変態だよ。アタシと、仕事仲間の女のコをもう一人買って、ホテルの部屋に連れていった。そしたら、オアハカじゃ顔の知られてる金持ちが待ってた。でっかいピーナツ農園を経営する日本人三世さ」

 「あの、他の人のことはいいから、パパのことを聞かせて下さい!」

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!