サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−37「マリネロの入り江」

 

マリネロの入り江。小さな湾には、細長い釣り船。砂浜に、太平洋を望むレストラン数軒。

 しばしの会話のあと、やぶにらみが辺りを見回した。中年男が道路の隅を指さした。女が道端から空き缶を拾い上げると、男はそこに自分のボトルから何かを注いだ。

 「グラシアス」

 やぶにらみが礼を言うと、男たちはまたどこかへと消えていった。

 「おいで、タロウ」

 太郎の肩に女の腕が自然にまわった。

 建物の角をひとつ曲がると、すぐそこがマリネロの入り江だった。小さな湾には、釣り船の細長い影がいくつか浮いていた。そして、太平洋を望んで何軒となく並ぶ小さなレストラン。昼間なら椅子とテーブルがにぎわす砂浜を、二人は歩いた。夜も更けた今、テーブルは店の奥の暗がりにしまい込まれ、椅子はその上で逆さになっていた。

 いつものことで、やり慣れているのだろうか。やぶにらみは、当たり前のように鉄の鎖をくぐって、人気のない一軒に入った。テーブルとテーブルの間に身を沈めると、二人はうまいぐあいに風を避けることができた。砂の上にぺたりと腰を下ろし、やぶにらみは空き缶を口に運んだ。

 「あ、あ、うまいっ」

 そして、缶を差しだした。太郎が汚い空き缶に躊躇していると、

 「飲みなよ」

 と、やぶにらみが催促した。

 断るわけにいかず、太郎はそれを一口飲んだ。ドロリとした液体に驚いて飲み込むと、熱い感触が喉を通りすぎた。

 ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ。

 アルコールの強さに太郎はむせた。吐き出したいが、うまくできない。どうにか喉の先まで押し込むと、ムッとするようなきつい香草の臭いが口の中に残った。

 「何ですか、これ?」

 「メスカルさ。うまいだろ? さあ、こっちにかしな」

 やぶにらみは空き缶を太郎の手から奪うと、ゴクリと音をたてて飲んだ。

 「タロウ、ナビダの夜に、こんな所で何してるんだい?」

 太郎はどう説明して良いか困った。

 「いいよ。言いたくなけりゃ、・・・」

 「そんなことはありません。・・・。もうあの家には居られなくなったんです」

 ハ。やぶにらみは鼻を鳴らすように一つ笑った。

 「どうせ、そんなこったろうと思ったよ。・・・。イネスに追い出されたんだろ。アタシは、いつかそうなるって思ってたんだ」

 「・・・」

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