「教えてやるよ」 下着をのぞかせた女が、太郎の耳元に息を吹きかけた。

 太郎がそれが誰だか判ったとき、相手も太郎だと判ったようだ。判ったとたん、女は手を振るのをやめた。

 やぶにらみだ!

 まるで裸でいるような乳首まではっきり見える服を着て、その短すぎる裾からは下着がのぞいていた。

 「なあんだ、お前か」

 やぶにらみは腹を立てていた。

 「こんな夜にここで会うのが、お前とはね。お前は悪魔の使いかよ!」

 「何をしているんですか、ひとりで?」

 「見りゃわかるだろ! 商売だよ。お前と違ってねえ、アタシらは働かなきゃ、喰ってけないんだよ!」

 「・・・」

 「こんな所で『立ちんぼ』してたって、ナビダの夜に客なんて来やしない。メキシコ・シティならともかく、・・・。何時間もボケッとツッ立ってて、やっと客が来たと思ったら、お前だよ!」

 「・・・」

 「だいたい、こんな事しなきゃならないのは、お前のせいなんだからね、タロウ! お前が悪運を運んできたんだ」

 「僕が?」

 「お前がアニタを止めたおかげで、こっちはいい迷惑だ。あの娘が金を稼ぎたいって頼むから、アタシは善意で店を紹介してやったのに、仕事をすっぽかして行かないから、パトロンがカンカンに怒ったのさ。アタシは、『アタシのせいじゃない』って言ったら、口げんかさ!」

 「・・・」

 「フン! どうせあんなパトロンの店なんかで働きたかないから、どうだっていいけさ。・・・。次の店を見つけるまで、ここがアタシの仕事場だよ」

 太郎は、やぶにらみの乳房を見つめないよう目を逸らした。女は、すかさずそれに気づいた。

 「そうだ、タロウ。お前が、今夜のアタシを買っておくれよ。ナビダの夜だ。まけておくよ」

 「え!」

 「そうだよ。それがいい」

 太郎は自分の顔が熱く火照るのがわかった。

 「・・・、タロウ、お前、オンナ知ってるのかい? 知らないのかい? 知らないなら、アタシが優しく教えてやるよ」

 やぶにらみがあの嗄(しゃが)れた声でささやいて、太郎の耳元に息を吹きかけた。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!