サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−34「みんな、家族と」

 

貧しい人たちも、金持ちの人たちも、メキシコのナビダ(クリスマス)は家で家族や友と過ごすものなのだ。

 茂みの切れ目から、中に入っていった。

 「ピート、ヘスーサ」

 十字架の立ててある辺りから、家の中をのぞいてみた。

 中にも外にも、人の気配は全くなかった。

 ナビダの夜だ。きっとどこか友だちの所にでも行っているんだろう。

 「ピート」

 最後にもう一度名前を呼んだ。

 やっぱり、いないか。

 太郎は諦めて、暗がりの中の草深い道を登った。

 カレテラに立っても、そこが闇であることは変わりなかった。ナビダの夜に働かねばならないメキシコ人などいない。そこを通るトラックなど一台も来なかった。街灯もなく、センターラインも消えかかった道路は、まっすぐ伸びた暗闇なのだ。

 なんで、こんな事になっちゃったんだろう?

 人気(ひとけ)のない一本道をトボトボと歩きながら、太郎は考えた。

 アニタのせいだ!

 アニタがいけないんだ! アニタが服なんかのために、«売り»しようなんてするからだ。

 あんな汚ならしい化粧なんかしてさ、金のために男に抱かれる目的が服かよ!

 あの安っぽい化繊の服のためかよ!

 かかっていた雲が流れたのか、月が現れた。海岸段丘の高台から、足元に太平洋の広がりが感じられた。

 こんなキレイな自然の中に住んでてさ、どうして服なんか気にするんだよ? 何にも着てなきゃ、僕らは自然の仲間に混ぜてもらえるのにさ! バカだよ、アニタは! 持ち物が増えれば、それだけ心配も増えるのに。

 一時間は歩いただろうか。それとも、もっと歩いたのだろうか。暗闇の先がぼうっと明るくなったような気がした。

 町だ。

 貧しい人たちが住む丘の下を通っても、歩兵隊の脇を過ぎても、カレテラに人通りはまったくなかった。ナビダは、家で家族と過ごすものなのだ。

 とうとう太郎はプエルト唯一の交差点のところまで歩いてしまった。

 あ、人がいる。

 夜の闇に慣れてしまった太郎の目には、その影の動きがよく見えた。影は一つだけだった。交差点に立ち、あちらを見たり、こちらを見たりするのだが、それはそこから離れようとしなかった。

 そのうちに影が太郎の姿に気づいたようだ。

 誰だろう? こっちにむかって手を振ってる。

 太郎は不思議に思いながら交差点に近づいていった。道路工事の穴に車が落ちないよう、半分に切ったドラム缶の中で火が燃えていた。

 影は黒い服を着た女のようだった。

 あ!

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!