「フェリス・ナビダ(メリー・クリスマス)」 母親イネスは、得意の魚料理。父親はメスカルに酔う。

 ナビダの夜がやって来た。

 イネスは、その祝いのためにどこからか大きなレッド・スナッパー(フエダイ属の魚)を手に入れてきた。この村の母親たちの得意は、いつだって魚料理だ。レヒーノは近所の家をのぞいてまわり、どこにどんなご馳走があるのか既に目星をつけていた。父親はすでにメスカルで酔っぱらい、ハンモックの中で鼾をかいている。葉で編んだ軒下の椅子に腰掛けて、太郎は村のざわめきに胸を弾ませていた。

 「アニタ、アニタ!」

 イネスが台所兼用の小屋から娘を呼ぶ。

 「シー、母ちゃん」

 「ホルヒートのところから、大蒜を少しもらっといで!」

 「シー」

 海へ伸びた軒の下でテーブルを整えていたアニタは、そのまま浜をまわって行った。

 「ホルヒートのうちじゃ、魚の揚げ物だよ。イモのフリートも山盛りだったの見たよ」

 レヒーノが太郎に報告した。

 アニタはニンニクの束を両手にぶら下げて慌てて帰ってきた。そして、小屋の中に入ると、またどこかに消えていった。この出入りを今日アニタは何度くり返していることだろうか。

 賛美歌の歌声が聞こえてきた。子供たちである。

 十四、五人はいるだろう。村の子供もいれば、見かけない子も混じっていた。先頭にはヘスーサと若い伝道師が立ち、子供の聖歌隊を導いていた。

 「フェリス・ナビダ、タロウ」

 ヘスーサが優しく言った。

 「フェリス・ナビダ」

 キャンドルの炎に浮かぶヘスーサの美しさに、太郎の声は小さくなった。

 イネス一家のために一曲歌い終えると、隊は去っていった。ヘスーサの肩にかかる長い巻き毛が、光に透けて燃えているようだった。

 「母ちゃん」

 アニタが大きな包みを手に戻ってきた。

 「なんだい?」

 イネスが魚を入れた鍋をテーブルに広げながら答えた。

 「フェリス・ナビダ」

 アニタが包みを母親に差しだした。

 「おや、アタシにかい?」

 イネスは前掛けで両手を拭って受け取った。

 「グラシアス。何なんだろうね? 開けてもいいかい?」

 「シー」

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  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!