サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−28「真っ赤な口紅」

 

小柄な体に青いラメの服。目元には青いアイシャドウ。真っ赤な口紅。茶色い指先から、血の色の長い爪。

 「ここはDF(メキシコ・シティ)じゃないから、夜が早いんだ。さっさとしな。隣の町のリオ・グランデまで日が暮れるまでにつかなきゃならないんだ」

 その翌日、陽が西に傾くころ太郎が波乗りから戻ると、小屋の中から大きなしわがれ声がした。

 夜の仕事のために化粧をしたやぶにらみが、椰子の葉を編んだだけの軒先から出てきた。腰に張り付くような黒いミニ・スカートに、へそをはだけた短いTシャツを着ていた。成熟した女の体が、いやおうなしに強調されていた。

 でも、どうして、やぶにらみがここから、・・・?

 そのあとに続いて、女がもうひとり小屋から出てきた。

 誰だろう?

 小柄な体を青いラメの服でおおい、髪は頭に高く巻かれ金色の髪飾りが刺されていた。目元には服に合わせて青いアイシャドウが濃くぬられ、真っ赤な口紅が念入りに化粧を施された顔に浮いている。素肌そのままの茶色い指先から、血のような色をした長い爪が伸びていた。

 「タロウ」

 名前を呼ばれて、太郎は愕然とした。

 「アニタ! アニタなの?!」

 「うん。・・・。どう、タロウ? ・・・。アタシ、きれい?」

 太郎は答えようがなかった。太郎には、そこに立っているのは一人の大人の女に見えたからだ。服の胸元も豊かに膨らんでいる。

 きれいも、何も、ちっとも、アニタには見えないよ!

 「ねえ、どう?」

 化粧の力で大胆になり、アニタはしなさえ作ってみせた。

 太郎は気分が悪くなった。

 「さあ、何をグズグズしてるんだよ、アニタ!」

 やぶにらみがせき立てた。

 その声をキッカケとするように、車のエンジンが始動する音がした。

 いつもの車だ!

 太郎は、やぶにらみの家の前に例の車が止まっているのを見た。男の大きな背中が運転席に見えた。

 「行くよ!」

 やぶにらみが先になって歩きだした。アニタもそれに続こうとする。

 太郎はすべてを察した。

 「ダメだ! 行っちゃダメだ、アニタ!」

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!