サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−26「ドメニコの霊」

 

やって来た弟ドメニコの霊に導かれるように、イネスは小屋を出た。

 やって来た霊に導かれるように、イネスは小屋を出た。

 「警察はすぐ来たよ。警察官が二人さ。銃を持ってさ。お前を呼び出してさあ。銃声が二発聞こえたよ! ラ・プンタの部落中に響いたもんだ」

 涙と鼻汁で濡れた褐色の顔が、夜の岬を向いていた。

 「あの岩だ! あそこにお前は浮いていたのさ! 鮫が、ブルーノがすぐやって来た。お前の身体は、すぐ足元さ。だけど、引き上げられない! ・・・。鮫がお前を食いちぎった。アタシは、ただ、それをぼけっと見てただけなんだよ!」

 イネスは宙にむかって両手を広げた。

 「ゆるしておくれよ! ゆるしておくれよ、ドメニコ! 聞いてるのかい?! ゆるしておくれよ」

 イネスは暗い海にむかって歩きだした。

 「イネス母ちゃん、だいじょうぶ?! イネス母ちゃん」

 太郎が止めようとしてすがりつくと、イネスはそのまま引きずって水の中に進んでいった。

 「ドメニコ、ドメニコ!」

 「目を覚まして! 誰もいないよ、イネス母ちゃん!」

 大潮で引きに引いた海の中を、二人は「発射台」のすぐ手前まで歩いた。

 そこにセットの波が入ってきて、二人を岸まで吹き飛ばした。

 そして、夜が明けて、太郎はいま同じ場所にいる。

 気味が悪くないわけではなかった。ただ、波があるのに陸でボケッとしているのは、もっと嫌だった。

 そんな気分でパドル・アウトしたので、なかなか波乗りに集中できなかった。確かに、昨夜のことが頭に残っている。

 死んだ人間は、どこに行くんだろう?

 ついつい、そんなことを考えてしまう。

 人は、いったい、どこに消えていっちゃうんだろう?

 死んだ人間も、・・・、そして、まだ生きている人間も。

 ・・・。よそう。それを考えるのはよさなきゃ。

 「今日は哲学的だな」

 ラインナップでピートが話しかけてきた。

 「だけど、ボンヤリしていると良い波を乗りそこなうぞ。今日はセットとセットの間隔が長いから、一度のがしたら二十分は待たなくてはならない。来たぞ。行け!」

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!