十一月二日。「死者の日」だ。小屋には、チョコレートの骸骨はなかった。粗末なお供えをグラスの中の蝋燭が飾った。

 十一月二日。今宵は「死者の日」だ。

 小屋には、チョコレートの骸骨はなかった。粗末なお供えをグラスの中の蝋燭が飾った。

 その前で、イネスが宙にむかって語りかけた。

 「ドメニコ、ドメニコ、そこにいるのはお前なんだろ。・・・。そうかい、やっと来てくれたかい。天国では、真面目にやっているかい、ドメニコ? アタシは、お前が気になってしょうがないんだよ。結局、アタシが、お前をそこに送ったも同然だからね」

 太郎は驚いた。アニタとレヒーノは聞き慣れているのか、ただ手を合わせて目を閉じていた。

 「お前の甥っ子と姪っ子も待っていたよ。それから、今年はもう一人子供が増えた。日本から来たタロウだ。ラ・プンタが気に入って、毎日そこで泳いでいる」

 暗闇の中の「発射台」をイネスは指さした。

 「お前が撃ち殺されたあの岩だよ。・・・。

 ドメニコよお、覚えてるかい、車に乗ったあの金持ちグリンゴをヨ? ・・・。悪いことは、みんな、グリンゴから始まるんだ。あいつにそそのかされて、『草』をやりさえしなければ、お前も、・・・。それから、コカイナを始めるまで幾日もかかりゃしなかったよなあ、ドメニコよお。コカイナを買うためなら、何でもやりやがってよ。家にある物は売っぱらって、売る物が無くなると、かっぱらいだ。プエルトに遊びに来るグリンゴどもに、村の娘を買わせたりもした。コカイナ、コカイナって、いつもやってないと、ダメだったよな。

 そのうち、お前の頭は、いかれてきちまった。

 『いいか。聖書にも書いてある。女は男の持ち物だ』

 そう言って、お前は自分の嫁をブン殴りはじめたんだ。忘れたなんて言わせないゾ、ドメニコ。嫁はずいぶん我慢したさ! でも、お前があんまりひどく殴るので、とうとう耐えきれず逃げ出した。

 それから、お前は時々いなくなるようになったっけ。グリンゴがやって来ると、そいつと一緒に姿を消して、ふた月もすると突然帰ってくる。しばらくここにいて、またグリンゴが来るといなくなった。村には、ドメニコはアカプルコに行って人を殺してるって噂する奴がいたよ。

 それだけじゃなかったよな、ドメニコ。殴る女がいなくなったお前は、誰を殴った?! エ! 誰を殴ったんだよ?! アタシさあ! アタシを殴りはじめやがって! 銃の握りを使ってよ!」

 涙がイネスの目からあふれだした。

 「アタシは、怖かったんだよ! 次に殺されるのは、アタシたち家族だと思ったんだよ! いけないかい? 家族を守るために、警察に言ったら、いけないかい!」

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