サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−23「本物のボトム・ターン」

 

どういうボトム・ターンが本物なんだ? 今のターンは、偽物じゃなかったか?

 「カット・バックをしたかったら、本当のボトム・ターンができないとダメだ」

 と、だしぬけにピートが言った。

 「僕のじゃ、どこがいけないの?」

 芽生えつつあった誇りを傷つけられて、太郎の声が大きくなった。

 「本物のボトム・ターンて、どこがどう違うの?」

 「つまらないことを言ってしまった。悪かったな、タロウ。気にしないでくれ」

 ピートは謝りの言葉を口にすると、さっと次に来た波に乗ってしまい、話はそこで途切れてしまった。

 だが、そう言われて気になるのは当たり前である。

 どういうのが本物なんだ?

 と太郎は考え始めた。

 それを意識しだすと、ターンがひとつ決まっても、前のように喜びがこみ上げてこない。

 今のは、偽物じゃなかったか?

 そんな気になってしまう。

 「ピート。本物のボトム・ターンを」

  「気にするな、タロウ。忘れてくれ。くだらない技術講釈をするつもりはなかったんだ。波乗りは、ただ楽しければ、それでいいんだ」

 そう断られてしまうと、ピートを見て技を盗むしかなかった。

 ピートがテイク・オフするときには、波が落ちてくる危険もかえりみずインパクト・ゾーンで正面からそれを見つめた。

 波に吹き飛ばされたってかまうものか! 安全なところにいたら、見えやしないんだ!

 何度となくボトム・ターンを見ていると、ピートの言っていることが解るような気がしてきた。

 ピートはまっすぐに突っ込んでってるぞ。

 本物と偽物の違いはどうやらそこらしい、と太郎は思った。

 左に曲がれないからって、最初から斜めにテイク・オフする癖をつけたのがいけなかったんだ。

 簡単じゃないか!

 太郎はさっそく試してみた。

 「ロケット発射台」の脇で待つと、ほどなく手ごろな波が来た。

 タイミングをはかって、波に背を向ける。パドルする手に力を込め、テイク・オフに必要なスピードを生む。波が太郎にかぶさるように切り立った。

 ほら、いただきだ。

 ボードが滑りだす。太郎はいつも通りボードの右の縁を手でつかんで持ち上げた。左のレールが波のフェイスに食い込み、水を切る。

 ボードは斜面を滑りながら、ゆっくりと左に向きをかえていった。

 ノー! こうじゃないよ!

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  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!