サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−19「バカンス気分」

 

デンマークの女たちは、のんびりとしていた。太郎も、バカンス気分になっていた。

 シポリテのヌーディスト部落に来て十日が過ぎた。デンマークの女たちは、あいかわらずのんびりとしていた。太郎も、それにつられて、ただバカンスに来ているかのように思いはじめていた。しかし、追われているという事実に変化はなく、それを思い出すと落ち着かなくなった。

 ・・・。少なくとも、ヘスーサに、リーナたちがここにいることを知らせなきゃ。

 そして、太郎はプエルト・エスコンディードに戻るバスに乗った。行きと同じトラックだ。東洋人の一人旅が乗客の注意を引かないよう、顔を下げて荷台の隅に身をひそめた。

 昼前にラ・プンタに着くと、まっすぐピートの家に行った。

 「ヘスーサ!」

 長いくせ毛がコンピュータの前で揺れるのを見て、太郎は彼女の名前を呼んだ。

 「タロウ! どこにいたの?! デンマークの三人組も消えちゃったのよ!」

 太郎は事の次第を説明した。

 「あなた達、一緒だったの?!」

 ヘスーサはPCのキーボードを叩き、太郎の話を聞くそばから送信する。

 「サパティスタ本部はこれからの処置を検討すると言っているわ。ねえ、タロウ。イネスの家で待っていてもらえないかしら。今度は、どこにも行かないでね」

 小屋では、イネスがひとり台所仕事をしていた。太郎が帰ってきたことに気づいても、眉間に皺を寄せたまま女は何も言わなかった。

 「戻ってきました」

 「丘の上のグリンゴと一緒だったのか?」

 とイネスは太郎を見ずに言った。

 「いいえ」

 「気をつけな」

 「はい」

 「まきぞえを喰うのは、ごめんだからね」

 「わかりました」

 イネスは黙ったまま包丁で魚をたたき切ると、鍋の中に投げ込んだ。水蒸気が上がり、太郎のほうへも油が飛び散ってきたが、オアハカ女はもう口を開かなかった。

 その場の雰囲気にいづらくなって、太郎はラ・プンタへ降りていった。しかし、今日は波がなかった。良いうねりが来る気配はないかと、雲と海を太郎は眺めた。

 「ターロー! ターロー!」

 宙にぴーんと糸を張るように声がした。

 名前を呼ばれて太郎が振り返ると、それはアニタだった。手を振りながら、砂浜を走ってくる。

 「ターロー! ターロー!」

 いつものように大ぶりなTシャツを一枚だけまとって、力いっぱい駆けてくる。 「どこ行ってたの、タロウ? ヘスーサが、ヘスーサがタロウが戻ってきたって言うから!」

 少女は岩場まで一気に走って、肩で息をしながら、それでも、大きな声で言った。

 「ヘスーサが、タロウはもうシポリテには行かなくていいって! そう伝えてって頼まれたの」

 「どうして?! みんな待っているのに!」

 「ヘスーサの仲間の人たちがシポリテに行くんだって。だから、タロウは行かなくてもいいんだって」

 アニタの声がはずんでいる。

 「大人の人たちが面倒をみてくれるから、タロウはもういいんだって。行かなくていいんだって」

 「そう。わかった。ヘスーサがそう言ってたんだね」

 「うん。これで、いっしょに波乗りができるよね。ねえ、タロウ?」

 まあ。確かに波乗りは悪くないんだけど、・・・。

 でも、どうしてアニタはこんなに嬉しそうに言わなければならないんだ?

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!