サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−16「シポリテ海岸」

 

シポリテ。デンマークの娘たちは、『ロンリー・プラネット』を手にヌーディスト・ビーチを目指す。

 「シポリテ、シ・ポ・リ・テ」

 デンマークのの娘たちが、『ロンリー・プラネット』を手にトラックの運転手に行き先を指示した。

 どこに行けばよいのか見当もつかない太郎は、女たちにまかせるしかなかった。

 そして、連れてこられたのは、ヨーロッパでその名の知れたヌーディスト・ビーチだった。

 もちろん、その辺の村に隠れたら、目立ってしょうがないけれど、・・・。

 でも、ヌーディストか、・・・。

 若い娘たちは海岸に着くなり、服を脱いだ。全裸で砂浜に横になるヒッピーたちの間を、同じように体に何も身につけず堂々と歩いてゆく。三人とも長い髪が優しく肩に落ち、そこから胸の美しい曲線が始まっていた。線の高みには、桜色の乳首が誇らしげに上を向いていた。

 「まだ陽が残ってる」

 そう言って、彼女たちも裸けた体を夕陽に向けた。

 次の日もまた次の日も、北欧の女たちは日差しを一秒でも惜しむように体を焼いた。裸の男と女たちの中にタオルを広げ、彼女たちはごく自然に肌をさらけだして横になる。真っ青な太平洋と熱帯の太陽の前では、水着で隠さなければならないものは何も無かった。

 太郎は困っていた。

 「タロウ、一人で何してるの? こっちにおいでよ」

 ティーナたちは親切に誘ってくれる。それをいつもいつも断るわけにはいかない。

 本物の女の人の裸なんか見たことないんだよ。僕はどうしてたらいいんだ?! どうやってごまかすんだ?!

 太郎はうつ伏せになって横になるしかなかった。

 「タロウはどうして背中ばかり焼いているの?」

 そうきかれると、青白い尻を左右に振って、

 「これじゃ、かっこわるいから」

 と言いつくろう。

 女たちももう理由はわかっていて、太郎をからかった。

 「タロウ、背中はもう十分焼けたわよ。お腹も焼いたら?」

 「暑くなってきたわ。きっと、海で泳いだら気持ちイイわ。タロウも行こう」

 「ねえ、タロウ、背中にオイルを塗ってくれない?」

 ほら、きた。古いテだ。

 それが毎日続き、太郎の目の前をわざと裸で横切ったり、いきなり背中に抱きついて自分の胸を押しつけてきたりと、大胆になっていく。

 もういい加減にしてくれ、と我慢しきれなくなって、太郎は三人にきいた。

 「ねえ、メキシコの警察に追われているんだよ。怖くないの?」

 「・・・、怖いわよね、わたしたち?」

 リーナが振り返って他の二人を見た。二人は大きく首を縦に振っている。

 「怖がっているように、見えないかしら?」

 と今度は太郎の目を見て言った。

 「ノー!」

 太郎の答え方があまりに真剣だったので、女三人は大声で笑い出した。

 「みーんな、いい思い出よ。怖いのも思い出」

 「メキシコは変な国すぎて、楽しいくらい」

 「千ドルも払って、航空券を買ったのよ。ひとつ嫌なことがあったくらいで、残りを楽しめなかったら損よ」

 笑われて、弱い女の人たちを救うヒーローのような気分になっていた自分が、途方もない間抜けのような気がしてきた。

 リーナたちが、楽しんでるんだったら、僕も好きなことやらなきゃなあ。

 太郎は立ち上がった。股間のものはしなだれて砂だらけになっていた。

 砂を払うと、もう裸でいることなんかどうでも良くなっていた。

 ようし、それなら!

 貧乏旅行者を泊めるバンガローに、太郎は駆け戻った。管理人の小屋に誰かが残していったサーフ・ボードがあるのを、太郎は知っていたのだ。

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  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!