コンピュータの電源を入れる。メールを開いたとたん、「緊急」の文字が飛び込んできた。
太郎は辺りをよく見回した。
メキシコの遅い昼食が終わると、イネスはどこかへ出かけた。アニタとレヒーノは岬のほうへ遊びに行った。父親はいつものようにハンモックでシエスタだ。
誰も見ていないことを確認して、太郎はピートの家へつづく坂道をのぼった。
家には誰もいなかった。
この家で頻繁に翻訳の仕事をするようになっていた太郎は、黙って中に入るとラップ・トップの電源を入れた。
えっ!
メールを開いたとたん、「緊急」の文字が飛び込んできた。
三人のデンマーク人を安全な場所へかくまえ。・・・。
ゲレーロ州警察が追跡開始。・・・。
原告が警察に殺害される可能性有り。・・・。
どうしよう?! ヘスーサを探さなくっちゃ!
太郎は外へ飛び出て、家のまわりを見回した。
ヘスーサが戻る気配はない。
ピートは?!
丘の上に駆け上がり、太郎はラ・プンタを見た。
波のない岩場には、誰もいなかった。
どうしたらいいんだ!
太郎はとにかく駆けだした。何軒もない村の家を、覗いてまわる。
「ヘスーサ! ピート!」
名前を呼んでも、答えはなかった。
ホントに、どうしよう?!
コンピュータの電源を切って何も見なかったことにしようか?
太郎はそれを考えないではなかった。
だって、僕にどうしろって言うんだ?!
このまま知らんぷりして、サーフィンしに海に出ちゃおうか、とも思った。
だけど、そうしたら、・・・。
そうしたら、僕は、また、・・・。
また、同じだ。・・・。
警官が昔の同僚をかばうために殺しに来るのだ。失敗はあり得ないだろう。
とにかく、どこか安全な場所に連れてかなきゃ。
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キミの探すものは、ココにある!
コ、コレが欲しかったんだよ!
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小説「ソウル・サーフィン(セネガル・カサマンス州カップスキリング岬にて)」
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旅の準備も、晩ご飯も、届けてくれたら、ありがたい。(M)