サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−13「月夜のサーフィン」

 

月が綺麗だから、サーフィンしながら瞑想している。自分はひとりぼっちではないということを感じる。

 月夜のことだ。

 波の音だけが延々と続いて他の音が聞こえないと、静けさが増してかえって眠れなくなる。

 ハンモックの中で首をもたげた太郎は、満月が海に引く大きな黄色い影を見た。 繰り返し聞こえる波の割れる音に耳をすますと、海の響きの静けさの中に微かに別な音が混じっているのが聞こえた。

 スー、ジャ、ジャ、ジャ。

 チャ。

 スー、ジャ、ジャ、ジャ。

 チャ。

 一定のリズムと間隔を持って、それは鳴った。

 太郎は起きあがった。

 砂浜をおりていってみる。

 月明かりの中で音のするほうに目を凝らした。

 ピートだ!

 夜中にサーフィンをしている。

 太郎はボードの隠し場所に走った。草の影にてこずって、ボードを引きずり出すときに、とがった葉で腕に切り傷を作った。パドルをすると、そこに塩水がしみた。

 「タロウ、来たか」

 「何してるの、こんな夜中に?」

 「月が綺麗だから、メディテーションをしている」

 「瞑想? 海で?」

 「こうやって波の動きに揺られていると、自分はひとりぼっちではないということが感じられないか?」

 「サーフィンするときは、みんな一人だよ。そう言ったのは、ピートじゃないか」

 「存在とは、波動だ。突き詰めれば、波も我々も同じものだ」

 「ピートの言ってることは、理屈に合わないよ」

 「矛盾か、・・・?」

 「そうだよ、ピート」

 「片腕でする拍手は、どんな音がするか?」

 「え?」

 「これは、君の国の禅の公案だろ?」

 「何、それ?」

 「知らないか。・・・、いや、いいんだ。気にするな」

 ピートは来た波に背を向けて、パドルを始めた。

 「月の光が美しいじゃないか。気持ちいいぞ、こんな夜のサーフィンも」

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!