サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−12「アップス・アンド・ダウンズ」

 

アップス・アンド・ダウンズ。高く上がって、低く落ちたら、乞食になった元サーフ・チャンピオンだ。

 アップス・アンド・ダウンズ。波のフェイスを上下しながら横切っていく、サーフィンの技術だ。これができるようになると、やっと、「サーフィンしている」と実感できるようになる。頭の中の美しいライドのイメージと、悲しいほどそれからかけ離れた現実が、一致しはじめる第一歩だ。

 ラ・プンタでテイク・オフするなら、最初のボトム・ターンは太郎のバック・ハンドだ。波を背中に背負うように、ボードを左にターンさせ、波のボトムから出る。後足でちょんとキッカケを入れて、トップで上をむいた板の向きを変えてやる。と、ボードの先端のノーズがふたたび下を向く。そこで、前足に思いっきり体重をかける。ボトムに落ちる加速が欲しい。うまくいけば、体を空気が吹き抜けるようにスピードが増す。これをくり返す。

 「人生みたいにアップス・アンド・ダウンズするんだ」

 とピートは言う。

 「高く上がって、低く落ちろってこと?」

 太郎が尋ねたら、ピートは大声を出して笑った。

 「それじゃ、落ちぶれて乞食になった元サーフ・チャンプだ」

 ピートは説明してくれた。

 「もっとゆっくりと体を動かして、大きな弧を描けってことさ。体重をきちんとのせれば、ボードの縁 でしっかりと波のフェイスを削り取れる。やるべき事をやりさえすれば、美しい水のスプレーがとぶ」

 太郎は言われる言葉の意味はわかるのだが、体がその通り動いてくれない。バタバタとボードの上で暴れて、無理やりターンしようとすると、バランスを崩して海に落ちてしまう。

 「・・・。タロウ、もっとゆっくりとやってみたらどうだい? 脚は、そんなに激しく動かすものじゃない。波は敵じゃないんだ。そんなに叩いたら、かわいそうだ。もっと優しく扱うんだ。そうしたら、今度は波が君を喜ばせてくれるから」

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