サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−9「パドルする美しさ」

 

アニタがパドルする姿は美しい。無駄な動きがまったく無いのだ。

 熱帯は、秋になったからといって涼しくはならない。ときには、どうしようもなく暑い日がやってきて、誰もが海に飛び込みたくなる。

 オアハカの小学校は三部制で、授業が朝・昼・晩と日ごとに登校時間が違う。 こんな日に昼授業に当たったレヒーノはついていない。母親に怒られて、しぶしぶと登校し、継ぎ当てボードが残された。

 「アタシもサーフィンしてみようかな」

 そう言って、アニタが太郎について来た。

 「難しいの?」

 ときかれて、

 「とても」

 と太郎は答えた。

 ラ・プンタには、もう子供たちが集まって泳いでいた。岩の上から飛び込んだり、波にむかって跳びはねたり、水しぶきをあげてはしゃいでいる。その中に大人の女が混じっていた。

 ヘスーサかな?

 と太郎は一瞬思ったが、刈り上げた髪を見て、それがやぶにらみの女だとわかった。

 やぶにらみは、まだ歩けない幼子に水浴びをさせていた。ときおり岩を振り返っては、危ない飛び込みをしようとする子供に注意している。

 「あの人は、ああやって近所の子供たちの面倒をみるなんて、立派だね」

 太郎が感心すると、

 「みんな自分の子供よ」

 とアニタが教えてくれた。

 「オラ」

 子供たちに挨拶をして、アニタは海に継ぎ当てボードを押し出した。


 アニタがパドルする姿は美しい。無駄な動きがまったく無いのだ。手を入れる。水をかく。ボードが前進する。

 アニタは潮の流れの地図でももってるのかなあ。

 最も楽に沖へゲット・アウトできる所から、アニタは次々に来る波を抜けていく。

 アニタは本物のサーフ・ボードに乗ったことなどないのに、どこで波を待てばよいのか正確に知っていた。

 「発射台」の脇で待つと、むこうががアニタを待っていたかのように、大きなセットの波が来る。

 テイク・オフでもアニタは何もしない。右、左とそれぞれ一回ずつパドルすると、もうボードの上に立っていた。

 波を横切り、カット・ザ・ウェイブ。

 優雅にターンさえしてみせる。

 ちぇっ、体重が軽いから、簡単にできるんだ。・・・。

 太郎は自分を納得させようとするが、やはりこれは嫉妬なのだ。

 「ケ・リコ! 立ったときの気分が、すごくイイ。海の上を歩いているみたい!」

 アニタが喜ぶのを、太郎は心から分かち合ってあげることができない。負けじと、海に飛び込んだ。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!