日本語に翻訳すれば、インターネットで日本の人にも伝えることができるわ。

 怖くないのかなあ?

 話が終わったあと、三人は若い女性旅行客に戻って、ラ・プンタと太平洋の眺めに一通りはしゃいで帰っていった。帰りがけの坂道をおりながら、ひとりが冗談でも言ったのだろうか、二十代の女たちは太郎の同級生のコたちにも負けないくらいけたたましく笑い声を立てた。

 あの人たちはメキシコの警察がどういうものか知らないからなのかなあ? それとも、単に気分の切り替えが早いんだろうか?

 太郎は良く解らなかった。


 「タロウ、お願いしたいことがあるの。翻訳を手伝って欲しいの」

 「日本語の?」

 「そう。この国は腐っているわ。最近もチャパスで、村人が何十人も虐殺されたの。殺されたのは私たちの仲間で、殺したのは制服を着た軍人よ。サパティスタがなぜ戦わなくてはならないのか世界中の人に理解してもらわなくてはならないの。インターネットで日本の人にも伝えることができるわ。協力していただけるかしら?」

 「・・・、・・・」

 太郎は答えられなかった。

 「もちろん報酬はお払いするわ」

 お金の問題ではなかった。世界的に知れ渡った反政府組織に関わり合いを持って、メキシコ警察に敵対することに、太郎は足がすくんだ。

 ヘスーサは太郎の顔色に気づいた。

 「タロウ、・・・。勇気を持って、手伝っていただけないかしら?」

 勇気か、・・・。

 「ドナのことも、日本の人たちに読んでいただきたいの」

 「ドナ?」

 「あのデンマークの人たちといっしょに襲われたインディオの女のコよ。あなたと同じくらいの年頃かな」

 「僕より年下かもしれない」

 「タロウ! ドナを知ってるの!」

 「僕も同じバスに乗っていたんだ」

 「それなら、・・・」

 と言いかけて、ヘスーサは太郎の判断にゆだねた。

 勇気か、あのとき勇気があれば、・・・。


  一回目の翻訳が終わって、コンピュータにそれを打ち込んだとき、ヘスーサは太郎に金をよこした。その金額が余りに多かったのも、どこかラ・プンタにそぐわない感じがした。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!