あのコは気を失ってなんかいなかった。月明かりに光る涙。あの時から、あのコはずっと遠くを見てる。

 あの遠くを見つめる眼差しは、一度見たらそう易々と忘れることのできるものではなかった。今日再び見たとき、太郎はそれが一キロ先から近づいてくるのがわかった。

 少女は、波打ち際を漂うように歩いていた。

 気を失っているのか?!

 そんなことあるわけない。歩いている人間が気を失っているはずがないじゃないか!

 少女の顔にまったく血の気がないように見えたから、太郎はそう思ったのだ。

 こんな遠くから見えるわけがない!

 だいいち、あのコは、あの時だって気絶なんかしてなかった。・・・。


 まず、バンディードスの奴らはニヤニヤ笑いながら、デンマークの女の人たちに近づいていったんだ。

 そして、サーフ・ボードの上で、あの人たちをさんざん弄んだあとだ。

 「見ろよ。こんな娘もいたぜ」

 バンディードスの一人が、あのコを引きずり出してきた。あのコは怯えて、抵抗なんかできなかった。涙を流してしゃがみ込んだだけだった。両腕で膝を抱き、体を震わせてた。

 「ノー!」

 ワンピースを脱がされそうになって、あのコが叫んだ。

 あんなつらそうな悲鳴、聞いたことがない!

 そして、闇の中に銃の先がキラめいた。

 ボグッ。

 それは、とってもとっても鈍い音だった。

 あのコの上半身が倒れて、横になった顔から血が流れだした。

 気を失ったのか?

 と僕は思った。

 そのほうが幸せかもしれない。

 逆らうことをやめたあのコを、バンディードスが順番に、・・・。あのコは気を失ってなんかいなかった。

 その証拠に、月明かりに光る涙を僕は見たよ。

 あん時から、あのコはずっと遠くを見てる。・・・。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!