サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−46「日本に帰るのは嫌だ」

 

息を止めた苦しみの中で、「このまま日本に帰るのは嫌だ。夏休みが終わったってかまうもんか」と。

 「ごきげんな波だ。太郎もイイ波に乗れたかい?」

 太郎は答えられなかった。沖に出られなかったというのは、ちょっと恥ずかしい。

 「ピート」

 「なんだい?」

 「ショート・ボードを貸してくれないかな?」

 「いいけど、どうするんだ?」

 「これならできるから」

 ピートは不思議そうな顔をした。

 「小さいボードじゃなかったから、僕はだめだったんだ。これなら、波をくぐって沖に出れる。沖に出さえすれば、僕だってライドできるさ!」

 ピートは優しく笑って、砂に立てたボードを差し出した。

 「楽にやれよ 、タロウ」

 ショート・ボードを受け取った太郎は、海にむかって駆けだした。

 今度こそは、負けない。

 ジャンプして飛び込むと、勢い込んでパドルした。

 波が崩れる。太郎は見よう見まねでボードを水面に押しつけて、ピートがするようにダック・ダイブした。波は太郎の背を叩いたが、なんとかショア・ブレイクの裏側にでることができた。

 それみろ! 出れなかったのは、ボードのせいさ。沖に出ちゃえば、もう僕のものだ。

 太郎はアウトサイドの岩までパドルした。

 僕に、乗れない波なんかない! 

 太郎は大きなセットの波を待った。

 イメージしていた通りにうねりが立ち上がる。

 波の割れるポイントにパドルして入る。

  波がカールする。

 完璧なテイク・オフ!

 太郎がそう思って、ボードに立とうとした瞬間だった。不安定な板は両手のあいだでバタついて、足をついた途端にどこかへ抜けていった。

 足をじかに水に突っ込むかたちになった太郎は、バランスを失って転び、そのまま「洗濯機セクション」で死ぬほど巻かれた。

 息を止めた苦しみの中で、このまま日本に帰るのは嫌だ、と太郎は思った。

 夏休みが終わったってかまうもんか。・・・。

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  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!