サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−44「大波のフェイス」

 

大きい波のフェイスが目の前に開いたら、ボードを放り投げて水に潜ることにした。

 八月の終わりになっていた。

 いつもなら降っても陽が沈む頃には上がってしまう雨が、珍しいことに夜半過ぎまで降り続いた。その雨も未明には降り止み、夜が明けてみると大波が海岸に押し寄せてきていた。

 ラ・プンタに来て大きい波に慣れたつもりの太郎だが、これほどまでのサイズのものは見たことがなかった。

 「ピート!」

 ピートはもうすでに浜に出ていて、ボードにワックスをつけていた。太郎の声に手をあげて答えると、その手で沖を指さした。

 「大きいぞ。タロウ」

 「イエース!」

 太郎はロング・ボードを隠してあった茂みに走った。

 「タロウ!」

 アニタが心配そうに呼ぶのが、背後に聞こえた。

 「タロウ! やめなよ! 波が大きすぎるよ」

 それでも太郎は海に飛び込んだ。

 大きく波打つ水面に、ロング・ボードがはじき返される。

 波打ち際のショア・ブレイクの高さが、もう二メートル以上ある。

 太郎はいったんはじき飛ばされて、砂の上まで押し戻された。

 負けるもんか!

 太郎は再び波に挑んだ。

 ボードにしがみつくようにパドルをくり返す。

 パドル、パドル、パドル。

 少し進んだかと思うと、白く強いスープにまたひっくり返されてしまう。

 何度くり返しても同じことだった。

 いつも通りにやってたら、ダメだ。

 大きく開いた波のフェイスが見えたら、ボードを放り投げて水に潜ることにした。そうやってスープをなんとかやり過ごし、次の波が襲いかかってくるまで懸命にパドルするのだ。

 しかし、セットの大きい波が来ると、太郎は簡単に岸へ押し流されてしまう。

 負けないゾ!

 ここさえ乗り切れば、このショア・ブレイクさえ乗り切れば、・・・。

 その先に最高の波が待っているのがわかっていた。

 僕はそれを手に入れるんだ。

 その思いが体を後押ししたのか、何回となく頭を水中に沈めているうちに沖に向かう流れの中に太郎は入り込んでいた。

 抜けたのか?!

 うねりの背に浮かんで太郎は前を見た。

 水平線が、白っぽい空に青くくっきりと見えた。

 「タロウ!」

 太郎は名前を呼ばれたような気がした。

  1. 箇条書き項目キミの探すものは、ココにある!

  1. 箇条書き項目コ、コレが欲しかったんだよ!