弟は、牡蠣とり。姉は、投げ網。太郎は、水中マスク。母親イネスに命じられ、夕食のおかず探し。

 「獲れた!」

 とレヒーノが叫んだ。

 幼い少年が得意げに振り上げた銛の先には、小ぶりのスズキが震えている。

 一緒に泳いでいる太郎には、それが不思議でたまらない。

 いったいどうやったら、こんなに速く動いてるものを刺すことができるんだ!

 ラ・プンタの岩の上に立つアニタは、はしゃぐ弟を見て呆れて言った。

 「レヒーノ。遊びはいい加減におよし」

 肩に担いだ投網がずり落ちてきたので、姉はそれを背負いなおした。

 「あんたは牡蠣を取りに来たんでしょ。魚はほうっておいて、ちゃんと働きな!」

 姉弟 は、母親イネスに命じられて夕食の菜を取りに来ていた。レストランテ・イネスにタダで厄介になっているので、少しでも家族に協力しようと、太郎もそれに加わったわけである。ただ、太郎が二人の助けになるかどうかは疑わしい。さっきから小一時間も水中マスク越しに海中をのぞいているのだが、何も獲ることができない。

 姉のアニタは、投網を背に目を凝らして水面を見つめている。

 水は底が見えるほどに澄んでいて、魚の群れがいっせいに向きをかえるたびに銀色に輝くのが見えた。

 アニタは間合いを計って網を投げる。すばやい動きの群れが運良く足元の岩の近くを通れば、大漁だ。採れた魚をアニタはその岩の背のくぼみに投げる。

 大きく平たいくぼみでは、魚が何匹か跳ねていた。砕けた波のしぶきがそこに格好の水たまりをつくっていて、強い日差しに魚が干からびてしまうのを防いでいる。日にさらされた岩は熱くなっていたが、水のあるところは苔がヌメりと生えていた。乾いた部分は硬い襞で、波にそこへ叩きつけられたら人間なんかひとたまりもなさそうだった。

 アニタは獲れた魚がたまると、そのたびに浜へ運んだ。砂浜に穴を掘ってその中に魚を入れておく。そして、誰かに盗まれないように再び砂をかけて、沖の岩に戻る。あとで掘り返し、魚のえらにツタを通して持ち帰るのだ。

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