見たばかりの滑りの熱さが太郎を興奮させた。Tシャツを脱ぎ捨てると、全速力のまま海に飛び込んだ。
り移って、太郎は興奮してい
た。
Tシャツを脱ぎ捨てると、半
欠けボードを手に駆けだし、全
速力のまま海に飛び込んだ。
腕をまわす太郎の中には、男
と同じイメージがあった。右手
を水に入れて五メートル、左で
十メートル。
少なくとも太郎の頭の中では
そうだった。
大きな岩の脇の波を待つポイントに来るまで、かなりの時間がかかった。
男が沖と浜を往復するのを太郎は何度も横目で見た。
水の上を美しく滑る姿が見えるたびに、太郎の全身に力が入った。
波が来て、一、二とかいて、落ちるとこで立つ。簡単じゃないか。
ポイントに到達すると、ボードの上にまたがれない太郎は水に体をつけて待った。
おだやかな風は海をなめらかに整え、うねりは一枚の布がゆれるようにやって来た。
ゆっくりと高くなり低くなり、藍色の海は盛り上がったところが光を映してゆらめいた。
来たぞ。
岸に振り返ると、朝日が昇っ
ていた。
さあ、一、二、・・・。
ボードの上に腹ばいになり斜
面を滑り降りる。
そこまでは、昨日までと同じ
要領だった。
波はより大きかったが、怖が
らずに頭から落ちた。
スピードがしっかり腹に感じ
られたところで、ボードの両脇
を押さえた腕を伸ばす。
そして、立ち上がる。
ぐっ。
太郎の左足が板の表面に乗っ
たときに、折れた口が水にも
ぐって滑るのをやめた。
あとは「てこの原理」だ。
半欠けボードは折れた先端を
支点に太郎の体を宙に投げると、
どこかに勝手に飛んでいってし
まった。
太郎は波の底に叩きつけられ
て、そこに水の壁が落ちてきた。
そして、縦に回る渦の中でも
みくちゃにされた。
なんで、海ってこうなんだよ。
息をしようともがきながら、
太郎は腹が立ってきた。
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キミの探すものは、ココにある!
コ、コレが欲しかったんだよ!
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小説「ソウル・サーフィン(セネガル・カサマンス州カップスキリング岬にて)」
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