半欠けボードの一辺が、切り立った水面に食い込んで走る。「バモス! バモス!( 行け、行け!)」
に、レヒーノは一つ目の波を泳ぎきった。
二つ目の波は、見逃した。
三つ目が、デカいんだ。レヒーノ。
「バモス! バモス!」
さあ、行け、と少年を励ますように太郎は
叫んでいた。
「バモス! バモス!」
レヒーノもそう繰り返して、岸にむかって
向きを変えた。
水平線のほうから、ひときわ高い波がやっ
て来た。手前の青い波の上に、より濃い青で
水をかく腕が、スピードを上げ
た。
盛り上がった波の頂が、岬に近
いところから割れはじめた。
左から右へ白く崩れた波が、そ
そり立った水面を追いかけるかの
ようだ。
静かでなめらかな面と暴れ狂う
白い部分の境界が、レヒーノに
体が宙に持ち上げられたが、
今度は放りだされない。
ガラスのような水の斜面を、ボードを抱いた少年が
滑りはじめた。
半欠けボードの一辺が切り立った水面に食い込ん
で、小さな体が走る。
それを崩れた波が後押しして、滑走は続く。
岸の直前で大きく波が跳ね上がった。
レヒーノは、それをバランスよく凌ぐ。
と、最後のさいごまで波に乗った。
濡れた砂の上まで滑ったので、しまいにはボードか
ら放り出されて転がった。
押していった波が戻ると、レヒーノの体は砂だらけ
になった。
「ケ・リコ!」
最高、と幼い少年は飛び上がった。
そして、太郎のいる岩場のほうに走ってくる。
砂だらけの体をはたこうともせずに一目散に駆けて
くる。
「ケ・リコ! タロウ、ケ・リコ!」
そう叫んで、太郎に飛び付いた。
あまりに激しく抱きついたので、ふたりは勢いあ
まって海の中に落っこちた。
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キミの探すものは、ココにある!
コ、コレが欲しかったんだよ!
ケリー・スレーターの異空間のライド。ニューヨーク州ロングアイランドのロングビーチでの撮影です。アメリカ東海岸でも、コンディションが整えば、極上の波が立ちます。
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小説「ソウル・サーフィン(セネガル・カサマンス州カップスキリング岬にて)」
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