サーフィン小説風メキシコ旅行記

ラ・プンタ

−8「マリアッチの歌」

 

マリアッチの歌うメロディーが、破れたスピーカーから静かに流れだした。太郎は星の降る浜で眠った。

 「タロウ、コカイナは女の敵

なんだよ。コカイナは男どもを

狂わせて、男どもは、・・・。

ミエルダ! 覚えておきな。メ

キシコ人はそうやって生まれた

んだよ。コカイナに酔った白い

スペイン人が、インディオの女

をなぐさみものにして、メヒ

カーノを作ったさ。まわりにい

た男たちはどうしたかって? 

女どもがおボボに突っ込まれる

のを笑いながら見ていたんだ」

 興奮すると、胸の前に広げた両腕に力を込

めてイネスは話した。

 「最初は肌の白い奴が盗みに来た。次に、

少し肌が茶色い奴らが来た。最後に、アタシ

らと同じ肌の奴らが襲ってきた。誰が、一番

残酷だったかって? 最後に来た連中だよ。

同じ顔と髪の色をした奴らが、アタシらを最

後のさいごまでもてあそんだのさ。だから、

山を逃げなきゃならなかった。海まで流れて

来なきゃならなかった。本当にこの国はどう

かしてるよ。誰かが誰かから盗むんだ。誰か

が誰かを犯すんだ。で、まわりの人間はそれを見て大喜びさ」

 オアハカの女は、太郎を豊かな胸に抱きしめた。

 「ごめんよ、タロウ。関係ないよその国の、あんたみたいな子供まで

巻き添えにして」

 インディオの血を引く女は、とても背が低く、そのくせガッチリとし

た体格をしている。

 なんてサイコロみたいなおばさんなんだ。

 と思って、太郎は吹き出してしまった。笑ったので、目元から涙の滴がこぼれた。

 水滴が頬を伝わるのを感じたら、締めつけるような何かが胸の奥から

こみ上げてきた。

 そして、僕は、・・・。いったい、僕は、・・・。

 怒っているのか、悲しいのか、それとも、おかしいのか、よく区別が

つかなかった。

 そのめちゃくちゃな感情をそのままに出したら、よっぽど変な表情だったのか、アニタとレヒーノが声を立てて笑った。イネスも笑った。

 「タロウ、アタシの家はあんたの家だよ。外にハンモックがあまって

いるから、そこで眠るといい。好きなだけ泊まっていきな」

 電灯が消された。

 一つしかない電源をラジオにつなぐためだ。

 地面に置かれた砂だらけのカーバッテリーに、家族はすべての電源を

頼っていた。

 マリアッチの歌うメロディーが、破れたスピーカーから静かに流れだ

した。

 勧められるままに、太郎は星の降る浜で眠った。

 
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☝テキーラ・マリアチを飲みながら、メキシコに思いをはせる。そんな夜があっても良いもの。そんなときには「正しさ」にこだわってみたいもの。テキーラ・マリアチをお買い求めの際には、ぜひ「正規品」を。ゴールドとシルバーがございます。

☜マリアッチは、メキシコの「流し」です。三曲くらい歌ってもらって、「はい、千円」という感じに支払います。もちろん、料金は交渉次第。ボラれる危険も大いにあり。それでも、この夜の冒険、「してみたい」というのが人情ですよね。左のビデオは、メキシコ・シティのガリバルディ広場。コロニア・ゲレーロという治安が良くないエリアにあるのですが、地元の人間にとって「マリアッチときたら、ここでしょ」という場所なので、一度は行ってみたいもの。もし旅行の日程の中にベラクルースが入っていたら、そちらのソカロを夜に訪れることも、おすすめです。南国の暖かい空気の中に、けだるく流れるマリンバの音は、テキーラにほろ酔い加減の旅人を「日本とは真逆の世界」へといざなうこと間違いなし。上のビデオは、オアハカ・シティで撮影されたもの。メキシコ・シティで勇気の出なかった方も、田舎なら大丈夫。ポケットには酒代のみ、パスポートは宿の金庫の中。それなら、スリの心配はありません。ただ、プエルト・エスコンディードからのアクセスは、悪いです。