けた口からのぞいていた。
くそっ、こんなもの!
太郎はボードを放り投げた。ボードはたいして飛ばず、水しぶき
が返ってきた。
さあ戻ろうと岸を振り返って太郎は驚いた。
岸は、遥か彼方にあった。
まずい。流されてる。
太郎は捨てたボードにしがみついた。
かろうじて体重を支える半欠けの板を頼りに、太郎は岸にむかっ
て泳ぎだした。腕を懸命に回して水をかき始めたが、浜は近づくど
ころかますます遠のいていく。うねりも高くなってきたような気が
する。深く水に突っ込んだつもりの腕が、何度も空を切った。
戻れなくなるぞ!
太郎の体は岬にむかって流されていった。
浜から小さく見えた岩は、大きくしかもより尖っている。
底は、いちめん岩だろうな。・・・。
大きなうねりがやってきて、太郎の体を高く持ち上げた。
大きな波が来る!
盛り上がったうねりの頂きで、太郎は水平線が高く黒ずむのを見
た。
巨大な波は、空を押し上げるように四方から迫ってくる。
太郎は沖にむかって必死に泳いだ。割れた口が抵抗となって邪魔をし、半欠けのボードは役に立っているのかどうかわからなかった。
それは、丸みを帯びた長方形のようだった。上下する波が、ときおり白いものをはじき上げる。
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キミの探すものは、ココにある!
コ、コレが欲しかったんだよ!
太郎の手がものに触れた。
取り上げてみると、異様に軽い。
自分の上半身ほどのものが、
軽々と持ち上がる。
長方形の一方の端には、三角
形の小さな舵が三つ付いてい
た。
なんだ、折れたサーフ・ボー
ドじゃないか。
✱サーフ・トリップに持っていく小物で、本当に重要なものは何でしょうか?
これは、やはり、ボードが傷んだときのリペア・キットということになると思い
ます。それも、太陽光に含まれる紫外線で硬化させるというタイプが便利です。
忘れてならないのは、透明なプラスティックのシート。これをレシン液の上から
あててマスキング・テープで固定するようにすると、サンド・ペーパーで磨かな
くとも綺麗に仕上がります。左側の SOLAREZ(ソーラーレズ)マイクロ・ライ
ト・ホワイトには、繊維が混ぜてあるので、頑丈な仕上がり。右のSURF-AID
(サーフ・エイド)はシートを貼るだけなので、手が汚れずに、綺麗な仕上が
り。修理をさっと片付けて、ビーチのバーへ「コロナ・ビール」を飲みに走るに
は、ともに便利な一品と言えそうです。
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小説「ソウル・サーフィン(セネガル・カサマンス州カップスキリング岬にて)」
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