それは、丸みを帯びた長方形のようだった。上下する波が、ときおり白いものをはじき上げる。
太郎は、夕陽の雄大さに吸い込まれるように浜をおりていった。
砂浜には前の夜に波が作った段差があり、それに気づかなかった太郎は足元の崩れた砂と一緒に一メートルほど滑り落ちた。
荷物も体も砂だらけになった。
気にせず立ち上がると、鬱陶
しい背中の荷物は放り投げた。そして、真っ赤に焼けた太陽に近づいていった。
その夕焼けの中に、何か白いものが光った。
さっきの鳥かな、と太郎は思った。
白いものはオレンジ色に乱反射する光の中に見えた。
空じゃない。海の上だ。
大きな波間を上下してこちらに近づいてくる。鳥にしては変だ。少しも動かない。
何だろう?
吸い寄せられるように、太郎は海の中に入っていった。
水は波打ち際で急に深くなっていた。
足が立たなくなったところで、太郎は泳ぎはじめた。
波は、岸から見たときよりも遥かに大きかった。
海水は急に立ち上がると、掘れ上がった底に落ちていく。
沖へ向かう流れは速く、太郎の体はみるみる白いものに近づいていった。
いったい何なんだ?
それは、丸みを帯びた長方形のようだった。
上下する波が、ときおり白いものをはじき上げる。
あと、もう少しだ。
と太郎は泳ぐ。もう目の前まで来ている。
触れた!
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キミの探すものは、ココにある!
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小説「ソウル・サーフィン(セネガル・カサマンス州カップスキリング岬にて)」
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