三月かかって貯めた旅費も、帰りの航空券も、貴重品袋ごとバンディードスに盗られてしまった。
太陽が刻々と高くなっ
ていく。
汗はあふれるように
吹き出してきて、T
シャツを濡らした。
脱いで絞ると、水滴
が焼けたアスファルト
にしたたり落ちた。
毛穴から、汚い物が
ぜんぶ出てってくれれ
ばいい。・・・。
太郎は小さな部落にさしかかった。家が二、三軒あるだけのとても小さな集落である。
「長距離」の文字がある。
そうだ、ママのくれた連絡先に電
話しよう。
胸元に手を当ててみた。
あ!
連絡先の紙切れを入れたはずの貴
重品袋はバンディードスに盗られて
いたことを思い出した。
三月かかって貯めた旅費も、帰り
の航空券も無かった。
しかし、ここに、とどまるわけに
もいかなかった。
太郎にできるのは、歩くことだけ
だった。(枠の下に続く)
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キミの探すものは、ココにある!
コ、コレが欲しかったんだよ!
パパ、僕はどうすれば良かったんだ?
パパなら、立ち向かっていったか?
歩き続ける太郎の頭の中にそんな言葉が浮かんでは、メキシコの熱気の中に消えていった。
熱された路面からは水蒸気がたち、こちらに向かってくる車はその陽炎の中を抜けてくる。道路にできた「逃げ水」で、それは川の上を滑ってくるように見えた。
強い日差しに頭はぼうっとしてきたが、足は止まらない。胃袋の奥の方から沸々と熱い何かが湧き上がってきて、太郎を前に進ませる。
いんだ。・・・。
そんな気分にもなる。
陽が傾く頃になっても、おさまることを知らない日差しは、
太郎の背を容赦なく焼いた。
体全体がふわっと宙に浮いたような感じがしてきて、自分の
ものではないようだ。頭の芯がカアッと熱くなって、そこだけ
が唯一存在しているような気がする。
体が熱で蒸発して、かげろうになったみたいだ。
・・・。
それでも、太郎は歩き続けた。なぜ歩くのかもよくわからなくなってきた。自分を罰しているような気もしたし、歩いていれば何かが手に入るような気もした。しかし、それは何時間か前のことで、今は何がなんだかわからなくなっていた。
歩きだしたんだから、歩こう。
太郎はただそう思った。
航空券の購入では、いろいろと頭を悩ませてしまうもの。買ってしまった後で、「これがベストの選択だったのか?」と後悔してもはじまりません。では、どうしたらいいのか? まずは、できるだけ多くの情報を集めることからスタート。こんなときは、広告もあなたの立派な情報源。(広告)
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小説「ソウル・サーフィン(セネガル・カサマンス州カップスキリング岬にて)」
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